お金の講義:自分の年金は自分で守ろう

突然ですが、みなさんは「消えた年金問題」を覚えていますか。
今から約17年前、国民に大きな衝撃を与えた年金に関する大事件です。若い世代の方の中には、名前だけ聞いたことがある、あるいはまったく知らないという方も多いかもしれません。
この問題を簡単に説明すると、持ち主不明の年金記録が約5,095万件も存在していたことが発覚し、本来受け取れるはずの年金額が少なくなってしまった人が続出した、という前代未聞の出来事です。
「国が管理しているものだから大丈夫」と多くの人が信じていた年金制度で、これほど大規模な記録漏れが起きたことは、社会に大きな不信感を生みました。
この反省を踏まえて国が導入したのが、「ねんきん定期便」と「ねんきんネット」です。
要するに、年金記録を国民一人ひとりが自分で確認する仕組みを作ることで、ミスを減らそうという考え方ですね。
さて、ここで質問です。
みなさんは毎年届く「ねんきん定期便」、きちんと確認していますか?

正直なところ、封を開けずにそのまま捨ててしまったり、何となく眺めただけで終わってしまったりしている人も多いのではないでしょうか。しかし、それはとてももったいない行為です。
ねんきん定期便は、ハガキまたは封書で、毎年誕生月に届くようになっています。この書類を見るうえでのポイントは、実はたったひとつしかありません。
それは、「加入実績に間違いがないかどうか」です。
そもそも、ねんきん定期便は「あなたの年金記録に漏れや間違いがないか確認してください」という目的で送られてきています。
たとえば、3年間しっかり働いて年金保険料を支払っていたにもかかわらず、加入実績が2年分しか反映されていない。こうしたケースがもし見つかったら、必ず年金事務所へ問い合わせをしなければなりません。
ただ、多くの人が本当に知りたいのは、
「自分は将来、いくら年金をもらえるのか?」
という点ではないでしょうか。
残念ながら、ねんきん定期便には、原則として将来の年金受給額は記載されていません。そこで活躍するのが、「ねんきんネット」です。
ねんきんネットでは、次のようなことができます。
1つ目は、年金記録を全期間・月別で確認できること。
2つ目は、年金に関する公的証明書をダウンロードできること。
そして3つ目が、多くの人にとって最も重要な、将来の年金額を試算・シミュレーションできる機能です。
この年金額シミュレーションは、実際に使ってみると非常に興味深い内容になっています。
試算方法は大きく分けて2種類あります。
ひとつは、「今の働き方を続けた場合」を前提に受給額を計算するかんたん試算。
もうひとつは、転職や独立、受給開始年齢の変更など、細かい条件を設定できる詳細な条件での試算です。
たとえば、
・転職したら年金額はどう変わるのか
・会社を辞めて自営業になったらどうなるのか
・年金の受け取り開始を遅らせたら、どれくらい増えるのか
・未納期間を追納したら、将来の受給額はどれほど変わるのか
こうした疑問を、自分自身の年金記録に基づいて簡単にシミュレーションできます。
年金は、老後資金の「主軸」になるお金です。
リアルな金額を具体的に把握できるようになると、老後の資産形成や生活設計が一気に現実的になります。
私の友人は、毎年必ず1回、ねんきんネットで年金額のシミュレーションをしています。
彼がよく言うのは、「年金の受給額が分からないまま、老後の計画なんて立てられるわけがない」という言葉です。確かにその通りだと感じます。
仮に、将来毎月10万円、年間120万円の年金を受け取れるとしたらどうでしょうか。
これを配当利回り4%の高配当株に置き換えると、約3,000万円分の資産価値に相当します。年金がいかに大きな存在かが分かりますよね。
だからこそ、「自分がいくら年金をもらえるのか、よく分かっていない」という人には、ぜひ今日中に一度、年金受給額を確認してほしいのです。
ねんきんネットの登録方法は、大きく分けて2つあります。
1つ目は、マイナポータルから登録する方法。
2つ目は、ユーザーIDを取得して登録する方法です。
マイナポータルを利用する場合は、マイナンバーカードとメールアドレスが必要です。
ユーザーIDを取得する場合は、基礎年金番号、メールアドレス、そしてねんきん定期便に記載されているアクセスキーが必要になります。
これらが手元にあれば、即日でねんきんネットを利用開始できます。
ただし、共済組合に加入している方など、基礎年金番号とマイナンバーが紐づいていないケースもあります。その場合、マイナポータルからは利用できず、基本的にはユーザーIDでの登録となります。
どうしてもマイナポータルを使いたい場合は、個人番号等登録届を提出する必要があり、手続きに1週間程度かかります。
最後にまとめです。

多くの人にとって、年金は老後生活を支える最大の柱になります。
だからこそ、記録ミスによって受け取れる年金が減るなど、あってはならないことです。
しかし、人が行う以上、国や会社の制度であってもヒューマンエラーは避けられません。実際に「消えた年金問題」は起こり、今なお1,000万件以上の年金記録が持ち主調査中という現実があります。
ここで大切なのは、極端な不信や感情論に走ることではありません。
「自分の年金は、自分で守る」という意識を持つことです。
幸い、今は自分で年金記録を確認できる便利なサービスがあります。
それを活用しない理由はありません。
年金制度に不満を感じる部分があったとしても、会社員として働く限り、制度そのものを避けることはできません。だからこそ、これ以上損をしないための知識と行動が重要なのです。
自分の未来を守るために、まずは年金を「知る」ことから始めてみましょう。