米国格下げというニュースを、どう受け止めるべきか

米国の信用格付けが引き下げられた――。
この一報を聞いて、胸の奥がわずかにざわついた投資家も多いのではないでしょうか。日本経済新聞によれば、大手格付け会社ムーディーズ(Moody’s)が、米国の信用格付けを最上位である「Aaa(トリプルA相当)」から「Aa1(ダブルAプラス相当)」へと引き下げました。理由として挙げられたのは、政府債務の増加と利払い費の拡大です。
格付けや格下げという言葉には、どこか難解で近寄りがたい響きがあります。しかし、これは決して専門家だけの話題ではありません。むしろ、すでに米国株や米国債、関連ファンドを保有している個人投資家にとって、基礎教養として押さえておくべき重要なテーマです。
格付けとは何か――借金返済能力の「通信簿」
信用格付けとは、簡単に言えば「借りたお金をきちんと返せるかどうか」を第三者が評価したものです。たとえば、莫大な資産と安定した収入を持つ人と、資産も収入も限られた人が同時に借金を申し込んだ場合、どちらが安心してお金を貸せるでしょうか。答えは明白です。
国家も同じです。国は税金と国債発行によって資金を調達しています。国債を購入する側にとって重要なのは、「この国は約束どおり返済してくれるのか」という一点です。そこで登場するのが格付け会社です。彼らは政府の財政状況、経済成長力、政治の安定性などを総合的に評価し、信用度をランク付けします。
三大格付け会社と、今回の意味合い

世界には主要な格付け会社が三社あります。ムーディーズ、スタンダード&プアーズ(S&P)、フィッチ・レーティングスです。実は、S&Pとフィッチはすでに米国の格付けを最上位から一段階引き下げていました。今回、最後まで最上位を維持していたムーディーズが追随したことで、三社の評価がそろった形になります。
これは、「米国は危険だ」という宣告ではありません。しかし、「何があっても絶対に大丈夫」と言い切れる存在ではなくなった、というシグナルであることは確かです。債務残高が増え、利払いが膨らみ続ける状況に対して、慎重な目が向けられているのです。
個人投資家が陥りやすい極端な反応
このようなニュースに接したとき、最も避けたいのは「ゼロか百か」で考えることです。
「米国はもう終わりだ」「米国債も米国株もすべて売却すべきだ」といった極端な行動は、投資の世界では往々にして後悔を生みます。市場はネガティブな情報を誇張して織り込むことがありますし、そのたびに過剰反応していては、長期的な資産形成は難しくなります。
必要なのは、恐怖でも無関心でもない、ちょうどよい距離感です。
出力をほんの少し下げるという選択
では、どう動くのが現実的でしょうか。結論を先に述べるなら、「フルパワーで米国に投資している人は、出力を1%ほど下げる」という発想です。
たとえば、毎月一定額を米国債ファンドに投資しているなら、その金額をわずかに減らす。米国株の比率が高すぎると感じるなら、ポートフォリオ全体を見直してみる。これは撤退ではなく、調整です。
同時に、格付けの高いドイツやカナダなど、他国の債券や株式に目を向けることで分散を強化する。分散投資は、利益を最大化するためだけでなく、リスクをなだらかにするための知恵でもあります。
米国の成長力と、これからの向き合い方

米国はこれまでも過剰債務と過剰消費を抱えながら、力強い経済成長でそれを乗り越えてきました。借金のペースを上回る成長力がある限り、問題は表面化しません。現時点でも、米国には十分な成長エンジンがあります。
ただし、もし成長が鈍化すれば、今回のような格下げはより重みを持ち始めます。その可能性に備えるという意味で、国際分散投資を少し意識する。それが、成熟した投資家の姿勢ではないでしょうか。
おわりに――ニュースを自分事として受け止める
今回の格下げは、米国投資を否定するものではありません。しかし、「何も考えずに全力投資を続けてよいのか」を静かに問いかける出来事です。
ほんの1%、出力を落とす。その小さな調整が、将来の安心につながるかもしれません。海の向こうの出来事として流すのではなく、自分の資産と向き合うきっかけとして、このニュースを受け止めてみてはいかがでしょうか。