人生最大の買い物に潜む落とし穴
家を持つ。
それは多くの給与所得者にとって、長年胸に抱いてきた目標ではないでしょうか。
家族と過ごす時間、安心できる居場所、老後の拠り所。
マイホームは単なる建物ではなく、「人生そのもの」を託す存在です。
だからこそ私たちは、こんな言葉を信じたくなります。
「大手ハウスメーカーだから大丈夫」
「高いお金を払うのだから、品質は保証されているはずだ」
しかし、その思い込みが、人生設計を大きく狂わせる引き金になることがあります。
1億3千万円の新築住宅で起きた、現実

FRIDAY DIGITALに掲載された記事は、その象徴的な事例でした。
大阪市在住の50代男性Aさんは、大手ハウスメーカーに依頼し、3階建て・4LDKの注文住宅を建てました。
建物価格は約1億3千万円。
誰もが「成功した家づくり」と感じる金額です。
ところが、引き渡し後すぐに違和感が表面化します。
天井には工事中の汚れが残り、
木材はずれて段差が生じ、
トイレの洗面ボウルは明らかに斜め。
さらにはエレベーターに床下浸水まで発生しました。
確認された修繕箇所は30か所以上。
不信感を募らせたAさんが第三者の調査会社に依頼すると、
さらに19か所もの不具合が見つかりました。
屋根裏では、断熱材が施工されず、無造作に置かれていただけだったといいます。
それでも住宅ローンは、容赦なく引き落とされ続けます。
建物に問題があっても、ローン契約は別物だからです。
注文住宅の本質は「夢」ではなく「事業」
この出来事は、極端な例でしょうか。
確かに、日本では多くの注文住宅が大きな問題なく完成しているのも事実です。
しかし見落としてはならないのは、失敗した場合のリスクの大きさです。
注文住宅とは、本質的に「建築事業」です。
そこには必ず、次のようなリスクが存在します。
- 工期の遅延や予算オーバー
- 施工ミスや欠陥
- 下請け業者の技量差
- 業者の倒産リスク
- 近隣トラブル
- 契約や責任の不明確さ
施主は、そのすべてを背負う立場になります。
しかも多くの場合、施主は建築の素人です。
大手ハウスメーカーであっても、
実際に家を建てるのは下請けの工務店です。
現場の品質は、人と仕組みに左右されます。
ブランド名は、現場を直接施工するわけではありません。
なぜ「お金持ちほど家を建てない」のか

興味深い調査があります。
アメリカで億万長者に「注文住宅を建てたことがあるか」と尋ねたところ、
全体では27%、弁護士に限ると12%という結果でした。
理由は実に明確です。
ひとつは、時間がもったいないから。
もうひとつは、リスクが高すぎるからです。
注文住宅には、打ち合わせ、現場確認、トラブル対応など、
想像以上の時間と労力が必要です。
年収が高い人ほど、自分の時間価値を理解しています。
その時間を本業に使った方が、合理的だと判断するのです。
特に弁護士は、
契約トラブル、責任の所在、裁判リスクを熟知しています。
だからこそ、「建てない」という選択をします。
住まいの失敗は、資産形成の失敗に直結する

給与所得者にとって、住宅は最大の資産です。
同時に、最大の負債でもあります。
もし家づくりで失敗すれば、
- 高額ローンに縛られ、転職や引っ越しが困難になる
- 修繕費や訴訟費用で貯蓄が削られる
- 精神的なストレスが仕事や家庭に影響する
資産形成は一気に停滞します。
最悪の場合、立て直しが難しくなることもあります。
この視点に立てば、賃貸という選択は決して逃げではありません。
柔軟性があり、リスクを限定できる、極めて合理的な選択です。
また、持ち家を望むのであれば、中古住宅という選択肢もあります。
建物の状態や周辺環境が可視化されており、
新築よりもリスクは格段に低くなります。
それでも注文住宅を建てたい人へ
それでもなお、「自分だけの家を建てたい」と思う気持ちは自然です。
その夢を否定する必要はありません。
ただし、次の現実を直視する必要があります。
- マイホーム建築は事業であり、自己責任であること
- 成功には覚悟・知識・労力が必要であること
- トラブルが起きたら、施主自身が最前線に立つこと
「大手だから安心」という言葉は、
冷静な判断を鈍らせる麻酔のようなものです。
最後に――家を憎んで、人を憎まず
欠陥住宅のニュースは、誰の心にも不安を残します。
しかし、家づくりに携わる多くの人が、
誠実に、真面目に、良い住まいをつくろうとしているのも事実です。
大切なのは、
夢と現実の両方を見つめること。
感情ではなく、構造で考えること。
住まいが人生の重荷になるのではなく、
安心して暮らせる「基盤」となる人が、
一人でも増えることを願ってやみません。