2000年前の哲学者も悩んだ「お金と幸福度」の関係について解説

「幸せは後でいい」という思い込みが人生を苦しくする

「幸せは後でいい」という思い込みが人生を苦しくする

「もっとお金が貯まってから、幸せになろう」
この言葉を、私たちはあまりにも無意識に口にします。資産形成に真剣であればあるほど、今は我慢の時期だと自分に言い聞かせ、人生の楽しみを先送りにしてしまいがちです。しかし、その考え方こそが、私たちの人生を静かに苦行へと変えてしまう落とし穴なのかもしれません。

お金があれば幸せになれる、は本当か

世の中には、知らず知らずのうちに刷り込まれた思い込みが数多く存在します。その代表格が、「お金がなければ幸せになれない」という信念です。もちろん、お金は生きていくために必要です。衣食住を支え、選択肢を広げ、人生の自由度を高めてくれます。ただし、必要であることと、十分条件であることは同義ではありません。

データが示す「収入と幸福度」の意外な関係

実際のデータを見てみましょう。国民一人当たりの実質GDP、つまり平均的な収入水準と、生活満足度の推移を比較した研究では、収入が増えても幸福度は比例して上昇していないことが明らかになっています。これは日本に限った話ではなく、アメリカやイギリスをはじめとする先進国全般で見られる傾向です。

幸福度が上がる「限界ライン」はすでに超えている

例外は、極端に所得水準が低い国々で、最低限の生活が満たされる段階までは、所得の上昇が幸福度の向上に直結します。しかし、日本はすでにその水準を大きく超えています。ここから導き出される教訓は明確です。
資産形成を、人生の苦行にしてはいけない。

資産形成は短距離走ではなく、長距離走である

確かに、短期間で莫大な資産を築く人もいます。起業家や自営業者の中には、数年で年収を何倍にも伸ばし、いわゆる「億り人」になる人もいるでしょう。しかし、これはあくまで例外です。多くの人にとって、資産形成は10年、15年、あるいは20年という長い時間をかけて進めるものです。

「お金が貯まってから人生が始まる」という危うさ

「お金が貯まってから人生が始まる」という危うさ

だからこそ重要なのです。その長い道のりを、「我慢と犠牲の連続」にしてしまってはいけません。
「50歳で1億円貯まったら、本当の人生が始まる」
もしそう考えているとしたら、立ち止まって考えてみてください。幸福を未来に預け続ける人生は、本当に豊かでしょうか。

アリストテレスが見抜いた「お金の危険性」

ここで、古代ギリシャの哲学者アリストテレスの話を紹介しましょう。彼は2000年以上前から、お金の持つ危うさに気づいていました。物には本来の用途に基づく「利用価値」があり、必要以上に追い求めることには意味がないと説いたのです。

モノには限界があるが、お金には限界がない

洗濯機や冷蔵庫、靴などは、一定数あれば十分です。しかし、お金にはその「ここまでで十分」という境界がありません。どこまでも貯め続けられてしまうからこそ、人は無自覚に貪欲になります。この点において、アリストテレスは「お金は人を狂わせる」と警告しました。

お金は交換券にすぎないという視点

お金はあくまで、モノやサービスと交換するための券です。一生で使い切れないほどの交換券をため込むことが、本当に理性的な行為なのか。この問いは、現代の私たちにも重く突きつけられています。

私たちが本当に求めている幸福とは何か

私たちが本当に求めている幸福とは何か

多くの人が望んでいるのは、便利さの最大化ではありません。
良い人間関係、穏やかな時間、成長を見守る喜び、友情、愛情。
これらはお金と直接交換できない価値であり、しかも実現に莫大なお金は必要ありません。

お金と幸福を混ぜてはいけない理由

お金と幸福は、完全なイコールではありません。保険と投資を混同すると危険なように、資産形成と幸福を結びつけすぎると、人生のバランスを失います。
お金はお金として追求する。幸福は幸福として味わう。

資産形成をしながら、すでに幸せであるという生き方

まとめましょう。
お金は、稼ぎ、貯め、増やすものです。しかし、幸せになるための条件にしてはいけません。資産形成が進んでから幸せになるのではなく、資産形成をしながら、すでに幸せでいる。その生き方は、十分に可能です。

最後に――お金も人生も、どちらも大切にするために

もし今、「お金が貯まるまで我慢しなければならない」と思い込んでいるなら、その紐付けを一度断ち切ってみてください。お金も増え、生活満足度も高まる――そんな健やかな資産形成は、決して夢ではありません。不安定な相場環境の中でも、人生の楽しさを忘れず、軽やかに、そして着実に歩んでいきましょう。あなたの「よい暮らし」を、心から応援しています。