失業リスクを正しく理解し、備えるために

働いて収入を得ている限り、多くの人は「失業」という出来事をできれば避けたいものだと感じるでしょう。しかし、どれほど真面目に働いていても、景気の変動や会社の経営状況、業界構造の変化など、個人の努力だけでは避けられない理由によって職を失う可能性は誰にでもあります。だからこそ、失業リスクについて正しく理解し、制度を知り、万一に備えておくことが重要です。
日本には、働く人が失業した際の生活を支えるための公的な仕組みが整えられています。その中心となるのが、「雇用保険」です。この制度は、失業によって収入が途絶えた人が、再び働く場を見つけるまでの間、一定の金銭的支援を受けられるよう設計されています。
失業給付とはどのような仕組みか

「失業給付」とは、雇用保険に加入していた人が、仕事を失った場合に受け取ることのできる給付金のことです。これは、単に仕事を辞めた人すべてに自動的に支給されるものではなく、いくつかの条件を満たす必要があります。
まず大前提として、働く意思と能力があるにもかかわらず、職に就くことができない状態であることが求められます。つまり、病気やけがなどで働けない状態の場合や、最初から働く意思がない場合には、対象外となります。また、求職活動を行っていることを示すため、ハローワークの窓口で求職の申し込みを行い、継続的に就職活動をしている必要があります。
受給するための主な条件
失業給付を受け取るためには、いくつかの条件を満たす必要があります。その中でも特に重要なのが、過去の加入期間です。原則として、離職した日以前の一定期間内に、保険に加入していた期間が通算で12か月以上あることが求められます。これは、短期間しか働いていなかった人よりも、一定期間働き、保険料を納めてきた人を優先的に支援するという考え方に基づいています。
このように、失業給付は「困っている人を無条件で支援する制度」ではなく、「働く意思を持ち、これまで制度を支えてきた人が、再出発するまでの間を支える制度」と言えるでしょう。
受給額はどのように決まるのか
失業給付の金額は、一律ではありません。受給額は、離職前の賃金をもとに算出されます。具体的には、賃金日額、給付率、そして所定の給付日数を掛け合わせることで、支給される総額が決まります。
このうち賃金日額とは、離職前の一定期間に支払われた賃金を日割りで計算した金額です。そして給付率は、その賃金日額や年齢などによって変動します。特徴的なのは、賃金が低かった人ほど給付率が高く設定されている点です。これは、収入の少ない人ほど失業時の生活への影響が大きいため、より手厚く支援するという考え方に基づいています。
所定給付日数を左右する要素
給付が受けられる日数も、人によって異なります。所定給付日数を決定する主な要素は三つあります。一つ目は、離職時の年齢です。一般的に、年齢が高いほど再就職が難しくなる傾向があるため、給付日数が長く設定される場合があります。
二つ目は、保険に加入していた年数です。長く働き、長期間制度を支えてきた人ほど、給付日数が手厚くなる仕組みです。三つ目は、再就職の難易度です。雇用環境や個人の状況によって、就職までに時間がかかると見込まれる場合には、給付日数が考慮されることがあります。
離職理由による違いに注意する
失業給付において重要なポイントの一つが、離職理由です。自分の意思で退職した場合と、会社の都合によって離職した場合とでは、給付の開始時期が異なります。一般的に、自己都合による退職の場合は、給付が始まるまでに一定の待機期間が設けられます。一方で、やむを得ない理由による離職の場合には、比較的早く給付が開始されることがあります。
この違いは、制度が「安易な離職を助長しない」一方で、「本人の責任ではない失業を手厚く支援する」ことを目的としているためです。
失業給付以外にも活用できる支援制度
雇用保険は、失業給付だけで成り立っているわけではありません。再就職が早期に決まった場合には、一定の条件を満たすことで、再就職を後押しする「再就職手当」が支給される仕組みがあります。これは、早く次の仕事に就く意欲を高める役割を果たしています。
また、働きながら、あるいは失業中に、仕事に役立つ知識や技能、資格を身につけるための学習費用を一部支援する「教育訓練給付金」も用意されています。これにより、単に失業期間をしのぐだけでなく、次のキャリアにつなげる準備が可能になります。
さらに、育児や介護といったライフイベントによって一時的に仕事を休む場合にも、「育児・介護休業給付金」があります。これらは、働く人が人生のさまざまな局面で仕事と生活を両立できるよう支えるための制度です。
まとめ:制度を知ることが最大の備えになる

失業は誰にとっても不安な出来事ですが、制度を正しく理解していれば、その不安は大きく軽減されます。雇用保険は、再び働くための準備期間を支える、非常によく考えられた仕組みです。
重要なのは、「失業してから調べる」のではなく、「元気に働いているうちから知っておく」ことです。自分がどのような条件で、どの程度の支援を受けられるのかを把握しておくことで、万一のときにも冷静に行動できます。失業リスクを正しく見直し、制度を味方につけることが、これからの不安定な時代を生き抜くための大切な備えと言えるでしょう。