有給休暇の「買い取り」は違法?
― 知っておきたい休暇制度の基本と例外 ―
働く人にとって身近な制度のひとつが「有給休暇」です。体調を整えたいとき、家族の用事があるとき、あるいは心身をリフレッシュしたいときなど、理由を問わず取得できる大切な権利です。
しかし実際には、「仕事が忙しくてなかなか使えない」「いざという時のために、できるだけ残している」という人も多いのではないでしょうか。その結果、気づいたときには有給休暇が期限切れで消滅してしまい、「せっかく付与されたのにもったいない」と感じるケースも少なくありません。
そこでよく話題に上がるのが、「使えないなら会社に買い取ってもらえないのか?」という疑問です。有給休暇の買い取りは果たして合法なのか、それとも違法なのか。今回は、有給休暇制度の基本から、買い取りが認められる例外まで、丁寧に解説していきます。
有給休暇制度の目的を知ろう

まず押さえておきたいのは、有給休暇がどのような目的で作られた制度なのかという点です。有給休暇は、労働者が心身の疲労を回復し、健康を保ちながら働き続けるために設けられています。つまり、「休むこと」そのものが制度の目的です。
有給休暇は、会社が任意で設ける福利厚生ではありません。一定の条件を満たした労働者には、必ず与えなければならないと法律で定められた制度です。会社の方針や経営判断によって「うちには有給休暇はない」と言うことは認められていません。
有給休暇が付与される条件
有給休暇は、正社員だけの特権ではありません。次のような条件を満たしていれば、パートやアルバイトであっても付与されます。
- 一定期間以上、継続して雇用されていること
- 出勤率が一定以上であること
これらの条件を満たしていれば、雇用形態にかかわらず、有給休暇は当然に発生します。働く日数が少ない場合でも、その勤務実態に応じた日数の有給休暇が与えられる仕組みになっています。
有給休暇には「期限」がある
意外と知られていないのが、有給休暇には有効期限があるという点です。有給休暇は、付与された日から一定期間が経過すると、使わなければ消滅してしまいます。忙しさを理由に使わずにいると、知らないうちに権利を失ってしまうことになります。
この仕組みがあるため、「どうせ消えるなら、お金に換えてほしい」と考える人が出てくるのも自然な流れと言えるでしょう。
有給休暇の買い取りは原則として違法

結論から言うと、有給休暇の買い取りは原則として認められていません。たとえ労働者本人が希望していても、会社がそれに応じて買い取ることは、基本的には違法とされています。
「労働者にとって得になりそうなのに、なぜダメなのか」と疑問に思う人もいるかもしれません。その理由は、有給休暇制度の本来の目的にあります。
なぜ有給休暇の買い取りが禁止されているのか
有給休暇の買い取りを自由に認めてしまうと、次のような事態が起こりかねません。
- 会社が「休まれると困るから、有給は全部買い取る」と判断する
- 労働者が「休むよりお金が欲しい」と無理をして働き続ける
このような状況が広がれば、労働者が十分に休むことができず、心身の不調を招く恐れがあります。結果として、有給休暇制度が形だけのものになってしまいます。
そのため、「休む権利をお金に換えてはいけない」というルールが設けられ、労働者の健康を守る仕組みになっているのです。
例外的に買い取りが認められるケース

有給休暇の買い取りは原則禁止ですが、例外的に認められるケースも存在します。それは、有給休暇の権利そのものが消滅する場面です。
たとえば、次のような場合が該当します。
- 退職によって、有給休暇を使う機会がなくなるとき
- 有効期限が過ぎて、時効消滅することが確定しているとき
これらのケースでは、どうせ休暇として使えなくなるため、金銭で清算しても労働者に不利益が生じません。そのため、例外的に買い取りが許されると考えられています。
ただし「会社の義務」ではない
ここで注意したいのが、「買い取りが合法になる=会社が必ず買い取らなければならない」というわけではない点です。例外的に違法ではなくなるだけで、会社に買い取り義務が生じるわけではありません。
つまり、買い取ってもらえるかどうかは、最終的には会社の判断次第ということになります。相談や交渉は可能ですが、拒否されたとしても、それ自体が違法になるわけではありません。
有給休暇は「目に見えない資産」
有給休暇は、給料のように明確な金額が表示されているわけではありませんが、働く人にとっては立派な資産です。使えば休息という形で価値を発揮し、使えなければ消滅してしまう、期限付きの資産とも言えます。
自分の持っている資産をきちんと把握し、大切に使う意識を持つことは、将来の安心にもつながります。休むことを後回しにするのではなく、「いつ、どう使うか」を意識して計画的に取得することが重要です。
有給休暇が取りづらい職場にいる場合

もし、「相談しても買い取りはできない」「そもそも有給休暇を取りづらい雰囲気がある」と感じているなら、その環境自体を見直すことも一つの選択肢です。人手不足が続く中で、働きやすい環境づくりに力を入れている職場も増えています。
働く側がスキルを磨き、会社に価値を提供する。その対価として、会社が適切な報酬や休暇、働きやすい環境を用意する。この健全な関係が成り立つことが、長く安心して働くための土台になります。
まとめ
- 有給休暇の買い取りは原則として違法
- 退職時や時効消滅時など、権利が消える場面では例外的に認められる
- 買い取りは会社の義務ではなく、最終的な判断は会社次第
有給休暇は、働く人に与えられた大切な権利です。「使い切る」「計画的に使う」「例外的に金銭に換える」いずれの場合も、自分の権利を理解したうえで行動することが大切です。休むことを正当に評価し、自分の働き方を大切にしていきましょう。