要介護状態になったらどうする?今こそ考えたい「介護リスク」とお金の備え方
年齢を重ねるにつれて、病気や老後の生活費について考える機会は増えていきます。その中でも、多くの人が漠然とした不安を抱きながら、具体的にはよく分かっていないのが「介護」に関するお金の問題ではないでしょうか。
「もし将来、介護が必要になったらどれくらいお金がかかるのだろう」「家族に迷惑をかけてしまうのではないか」――こうした不安を感じるのは、決して特別なことではありません。
しかし、介護についてはすでに社会全体で支えるための制度が整えられています。その代表的なものが、公的な介護保険制度です。本記事では、この制度の基本的な仕組みを確認したうえで、「民間の介護保険は本当に必要なのか」という点について、原理的な視点から丁寧に解説していきます。
公的な介護保険制度の基本

公的な介護保険制度は、一定の年齢になると保険料を支払い、将来要介護状態と認定された場合に、介護サービスを低い自己負担で利用できる仕組みです。
たとえば、訪問介護や生活支援などのサービスに月5万円かかったとしても、自己負担は原則として1割程度で済み、実際に支払う金額は数千円に抑えられます。残りの費用は、保険料や税金によって社会全体で支えられています。
保険料の支払いは中高年期から始まり、給与から天引きされる形で負担します。そのため、ある年齢を境に社会保険料が少し増えたと感じる人もいるでしょう。これは、将来自分自身が介護を必要としたときに備え、あらかじめ負担を分かち合っているという意味があります。
この制度は、「介護が必要になった人を、家族だけでなく社会全体で支える」という考え方をもとに設計されています。まずは「介護サービスは思ったより自己負担が少ない」という点を知っておくだけでも、不安はかなり和らぐはずです。
民間の介護保険は必要なのか?
ここで多くの人が次に考えるのが、「公的制度だけで本当に足りるのか」「念のため民間の介護保険にも入っておいた方が安心なのではないか」という疑問です。
将来、高齢者が増え続け、現役世代が減っていく中で、制度が維持できなくなるのではないかと心配する声もよく聞かれます。
しかし、結論から言えば、民間の介護保険に加入する必要性は非常に低いと考えられます。その理由は、保険という仕組みの「成り立ち」そのものにあります。
保険が成り立つ条件とは

保険は本来、「めったに起きないが、起きた場合のダメージが非常に大きい出来事」に備えるための仕組みです。
多くの人が少額ずつお金を出し合い、実際にトラブルに遭った少数の人を、その資金で支える。これが保険の基本構造です。
たとえば、1万人がそれぞれ1万円を出し合えば、1億円の資金が集まります。その中で、実際に給付を受ける人がごく少数であれば、十分な補償が可能になります。しかし、もしほとんど全員が給付を受けることになったらどうでしょうか。結局、集めたお金をほぼそのまま全員に返すだけになり、運営は成り立ちません。
つまり、「多くの人が当たる保険」は、原理的に成立しないのです。
介護は「当たる人が多いリスク」
では、介護はどうでしょうか。
年齢を重ねる過程で、何らかの介護が必要になる可能性は非常に高いと言えます。実際、高齢者の中では、一定割合の人が要介護状態と認定されています。これは、介護保険に加入した人の多くが、将来的に給付を受ける側になることを意味します。
このようなリスクは、「まれに起きる不幸」ではなく、「多くの人に起こりうる出来事」です。そのため、民間企業が保険商品として成立させようとすると、保険料を非常に高く設定するしかありません。結果として、支払う保険料に対して受け取れる保障が見合わない、いわゆるコストパフォーマンスの悪い商品になりやすいのです。
これは、どの会社の商品かという問題ではなく、仕組みそのものの問題です。
なぜ公的制度は存在できるのか
公的な介護保険制度が何とか成り立っているのは、保険料だけでなく、税金など他の財源も組み合わせて運営されているからです。それでもなお、制度の維持は簡単ではありません。
この現実を踏まえると、同じリスクを民間保険だけでカバーするのがいかに難しいかが分かるでしょう。
本当に必要な備え方とは

では、民間の介護保険に頼らない場合、どのように備えればよいのでしょうか。
答えはシンプルで、「公的制度+自分で用意する資金」です。
一般的には、数百万円程度の自己資金があれば、公的介護保険と組み合わせることで、十分に対応できると考えられています。この金額も、一度に用意する必要はありません。中高年期から少しずつ積み立てていけば、現実的な負担で準備することが可能です。
貯蓄であれば、介護が不要だった場合には、他の目的に使うこともできます。この柔軟性は、保険にはない大きなメリットです。
- まとめ:仕組みを知れば不安は減らせる
介護に対する不安の多くは、「よく分からない」という気持ちから生まれます。しかし、制度の仕組みや保険の原理を理解すれば、必要以上に心配する必要がないことが見えてきます。
多くの人が給付を受ける介護リスクは、民間保険には向きません。だからこそ、公的制度を正しく理解し、足りない部分を貯蓄で補うという現実的な備え方が重要です。
「不安だから何かに入る」のではなく、「仕組みを理解したうえで備える」。それが、将来の介護リスクと向き合う最も堅実な方法と言えるでしょう。