個人向け社債ブームを冷静に見つめ直す
2025年2月2日付の日本経済新聞に、次のような記事が掲載されました。
「個人向け社債、金利上昇で脚光『優待』で顧客と接点」
金利上昇局面を背景に、個人向け社債への注目が高まっている、という内容です。
預金よりも高い利回りが期待でき、さらに「オマケ」や「優待」が付く商品もある。
こう聞くと、少し魅力的に感じる方も多いかもしれません。
ただし、最初に結論を明確にしておきます。
個人向け社債は、あえて選ぶ必要のある金融商品ではありません。
資産形成の王道は、引き続き「現金+インデックスファンド」のシンプルな構成です。
本記事では、その理由を丁寧に整理していきます。
そもそも「社債」とは何か

社債とは、企業が資金調達のために発行する「借用証書」のようなものです。
企業が投資家からお金を借り、その代わりに利息を支払い、満期になったら元本を返す。
この約束を形にしたものが社債です。
- 企業が発行 → 社債
- 国が発行 → 国債
現在は電子管理が主流のため、紙の証書を目にすることはほとんどありませんが、
本質的には「お金を貸す契約」である点は変わりません。
個人向け社債が注目されている理由
最近、個人投資家向けの社債が話題になる理由は、主に次の2点です。
① 預金よりも高い利回り
定期預金の金利が依然として低水準にある中、
年1〜3%程度の利回りを提示する社債は、確かに目を引きます。
「預けているだけでほとんど増えないなら、少しでも利回りの高い商品を」
そう考える気持ちは自然なものです。
② 「オマケ」や「優待」が付いている
一部の個人向け社債には、抽選や特典が付いています。
- 鉄道会社の社債:宿泊券、運賃割引
- 小売企業の社債:ギフトカード
- スポーツ関連企業の社債:イベント参加権
株主優待に近い感覚で、楽しさを感じる仕組みが用意されているわけです。
それでも「買わない」という判断

では、これらを踏まえて個人向け社債は有力な選択肢なのか。
私自身の答えは明確です。
自分なら買いません。
理由はいくつかありますが、重要な点を中心に整理します。
利回りとリスクのバランスが合わない
個人向け社債の利回りは、確かに預金より高い場合があります。
しかし、その水準は多くの場合、1〜2%台です。
一方で、社債には次のようなリスクがあります。
- 発行企業が倒産すれば、元本が毀損する可能性がある
- 株式のような大きな成長リターンは期待できない
つまり、
「リスクはあるが、リターンは限定的」
という構造になっています。
このバランスは、長期の資産形成という観点では、あまり魅力的とは言えません。
分散しにくく、手間がかかる
リスクを抑えるには分散投資が重要ですが、
社債でそれを行おうとすると、複数銘柄を選ぶ必要があります。
しかし、社債は株式や投資信託ほど情報が整っておらず、
- 発行条件の比較
- 財務状況の確認
- 償還までの管理
など、手間がかかります。
それに見合う成長性があるかというと、疑問が残ります。
企業は「なぜ」個人からお金を借りるのか
ここで視点を変えて、企業側の立場から考えてみましょう。
企業は通常、資金調達をする際、
- 銀行借入
- 機関投資家向け社債
といった選択肢を検討します。
では、なぜあえて個人向け社債を発行するのでしょうか。
考えられる理由は、次のようなものです。
- 銀行よりも低い金利で資金を集められる
- 財務条件が厳しく、銀行借入に限界がある
- 経営への関与を避けたい
もちろんすべての企業がそうとは限りませんが、
個人は交渉力が弱く、情報も限られた存在であることは事実です。
金融の世界での「立場の違い」
金融市場において、個人投資家はどうしても不利な立場に置かれがちです。
- 機関投資家:情報・分析力・交渉力がある
- 個人投資家:情報が限られ、感情に影響されやすい
「オマケ」や「優待」は、その心理を突いた仕組みとも言えます。
冷静に考えると、
本当に条件の良い金融商品に、わざわざオマケを付ける必要はありません。
株式と債券の立ち位置の違い
株式投資は、企業の成長に直接参加する手段です。
社会全体の成長を取り込める点で、非常に強いポジションにあります。
一方、社債はあくまで「お金を貸す側」。
得られるリターンは、あらかじめ決められた範囲に限られます。
特に少額の個人投資家は、企業にとって優先順位の高い存在ではありません。
まとめ:誘惑に負けず、航路を守る

個人向け社債が注目されるのは、自然な流れです。
- 預金より高い利回り
- 分かりやすい仕組み
- 有名企業の名前
- 魅力的なオマケ
しかし、資産形成において本当に重要なのは、
派手さではなく、再現性と合理性です。
インデックスファンドと現金を中心にしたシンプルな運用は、
退屈に見えるかもしれませんが、長期では非常に強力です。
金利上昇局面では、今後も似たような商品が次々と登場するでしょう。
だからこそ、
- 利回り
- 特典
- ブランド名
に惑わされず、自分の投資方針を守り続けることが大切です。
資産形成はマラソンです。
目先の誘惑よりも、長期のゴールを見据えて、淡々と進んでいきましょう。