失業給付と傷病手当金を正しく使い、最長2年6か月の生活保障を受けるための実践ガイド
病気やメンタル不調によって、これ以上今の仕事を続けることが難しいと感じたとき、多くの人が直面するのは「治療に専念したいが、生活費が不安」という現実です。休むこと自体は必要だと分かっていても、収入が途絶えることへの恐怖から、無理を重ねてしまう人は少なくありません。
しかし、日本にはこのような状況にある人を支えるための制度として、傷病手当金と失業給付(失業保険)が用意されています。この2つは同時に受け取ることはできないものの、正しい順序で申請することで、結果的に最長2年6か月(30か月)にわたり給付を受けることが可能です。
この記事では、実際にどう動けばいいのかが分かるよう、制度の使い方と手順を解説します。
2年6か月受給の仕組み

まず全体像を整理しておきましょう。
長期間の給付が可能になる理由は、以下の2つの制度を段階的に利用する点にあります。
ひとつ目が、健康保険から支給される傷病手当金です。これは、病気やけがによって働くことができない状態にある人に対し、生活を支える目的で支給されるもので、条件を満たせば最大18か月受け取ることができます。
ふたつ目が、雇用保険から支給される失業給付です。こちらは、働く意思と能力があり、再就職を目指している人を対象とした制度で、条件次第では最大10か月(45歳以上は12か月)受給できます。
この2つを合計すると、最大で30か月となります。
ただし、この期間をフルに活用するには、最初の段階での動き方が極めて重要になります。
退職前に必ず整えておくべき条件

傷病手当金を受け取れるかどうかは、退職前の行動でほぼ決まると言っても過言ではありません。
まず、退職の意思は余裕をもって会社に伝えます。目安としては、退職予定日の1か月前程度で問題ありません。その後、在職中に連続3日以上、病気やけがを理由に会社を休む期間を作る必要があります。これは傷病手当金の支給条件のひとつであり、欠勤である必要はなく、有給休暇を使っても構いません。
重要なのは「連続して3日以上」であることです。途中で出勤日を挟んでしまうと条件を満たさなくなるため、土日祝日を含めるなどして、確実に3日以上続くように調整します。
この連続休暇の初日には、必ず病院を受診します。心療内科や精神科・メンタルクリニックなどで、現在の状態が仕事に支障をきたしていることを伝え、医師から就労が困難であるという判断をもらうことが必要です。
そして、見落とされがちですが非常に重要なのが退職日の扱いです。退職日に出勤してしまうと、「退職日まで働けていた=就労可能」と判断され、傷病手当金の対象外となる可能性があります。そのため、退職日は必ず欠勤または有給とし、出社や荷物整理なども行わないよう注意が必要です。
退職後に行う 保険と年金の手続き
退職後は、まず健康保険の切り替えを行います。選択肢は、国民健康保険へ加入するか、在職中に加入していた健康保険を任意継続するかのどちらかです。保険料は人によって異なるため、事前に市区町村や保険窓口で確認するとよいでしょう。
あわせて、国民年金の免除や猶予の申請も検討します。退職による特例が使える場合もあるため、年金窓口で相談しておくと、固定費の負担を軽減できます。
傷病手当金の具体的な申請の流れ

傷病手当金を申請するには、在職中に加入していた健康保険の傷病手当金支給申請書を入手します。申請書には、本人が記入する欄、会社が記入する欄、医師が記入する欄があります。
まず、退職後なるべく早めに2回目の通院をし、医師に申請書への記入を依頼します。その後、会社へ申請書を郵送し、事業主記入欄の記入を依頼します。この際、返送用封筒と切手を同封しておくとスムーズです。この際に、病名が会社に伝わることはありません。
すべての書類が揃ったら、加入していた健康保険組合へ提出します。申請後、おおむね1か月ほどで支給の可否が通知され、支給が始まります。なお、傷病手当金は1か月ごとに申請が必要であり、定期的な通院も欠かせません。
ハローワークでの受給期間延長申請
傷病手当金を受給している間に忘れてはならないのが、失業給付の受給期間延長申請です。失業給付は、原則として退職後1年を過ぎると受け取れなくなります。そのため、治療に専念している間に期限が切れないよう、ハローワークで延長申請を行います。
申請は、退職日の翌日から30日以上経過してから可能です。ハローワークでは、「病気の治療のため、失業給付の受給期間延長をしたい」と伝えれば対応してもらえます。
傷病手当金受給中に毎月必ず行うこと
傷病手当金の支給が決定した後は、月に1回の通院と、月に1回の申請が必須です。通院せず申請もしない場合、治療意思がないと判断され、支給が止まる可能性があります。申請書については、会社の記入は退職後の初回のみで問題ありません。2回目以降は本人欄と医師記入欄のみで提出できます。なお、病気が治れば給付は終了し、受給期間は最大通算18か月です。再発時の扱いは健康保険組合によって異なるため、自己判断せず医師と必ず相談してください。
回復後、失業給付へ切り替える

病気やけがが回復し、医師から「就労可能」と判断されたら、次は失業給付へ切り替えます。医師に必要な証明書(傷病証明書・就労可能証明書)を書いてもらい、ハローワークで受給期間延長の解除手続きを行います。
この際、就職困難者に該当する旨を必ず伝えることが重要です。伝えなければ、通常の短い給付期間で処理されてしまうことがあります。
その後は、ハローワークで月に1回以上の求職活動を行いながら、失業給付を受給します。早期に再就職が決まった場合には、再就職手当が支給されるケースもあります。
最後に
これらの制度は、「本当に必要な人が、安心して回復と再出発を目指すため」に用意されています。確かに手続きは多く、分かりづらい部分もありますが、順序さえ間違えなければ、生活を立て直すための大きな支えになります。
重要なのは、我慢し続けることではなく、正しく制度を使うことです。働けない状態かどうかは医師が判断することであり、条件に該当するなら遠慮する必要はありません。
この記事が、「具体的にどう動けばいいのか分からない」という不安を解消し、次の一歩を踏み出すための実用的な指針になれば幸いです。