金利5%は本当に「おいしい」のか

― 金利から考える債券投資の基本 ―
最近、長期の債券利回りが高水準に達しているというニュースを目にする機会が増えています。中でも、長期間お金を預けるタイプの債券で、利回りが5%前後に達しているという話題は、多くの人の関心を集めているようです。
資産形成において、最も重要な情報の一つが「金利」です。しかし、この金利について、私たちは本当に理解できているでしょうか。例えば、次のような質問にすぐ答えられる人は意外と少ないかもしれません。
現在、私たちが普段使っている普通預金の金利はどの程度でしょうか。あるいは、住宅ローンの変動金利はどのくらいの水準でしょうか。実際には、預金金利はごく低く、住宅ローン金利も非常に低水準に抑えられています。それにもかかわらず、多くの人はこれらの「身近な金利」を正確に把握していません。
一方で、資産形成に成功している人ほど、金利に対する感度が高い傾向があります。預金金利やローン金利といった基本的な情報はもちろん、個人向けに発行されている債券の利回りや、海外の債券市場の動向など、やや専門的な金利にも自然と目が向いています。
金利は、敵に回すと非常に恐ろしい存在です。借金をすれば利息という形でお金が出ていき、インフレ下では現金の価値が目減りします。しかし、金利を味方につけることができれば、資産形成においてこれほど頼もしい存在はありません。だからこそ、日頃から金利に対するアンテナを立てておくことが重要なのです。
現在の債券利回りをどう見るか
足元では、短期から長期まで、幅広い年限の債券利回りが高めの水準で推移しています。背景には、景気が底堅く推移していることや、金融政策の転換時期が後ろ倒しになっていることなどが挙げられます。その結果、短期の債券だけでなく、長期の債券でも利回りが上昇しています。
ただし、こうしたニュースを聞いて「なるほど、そういうことか」と完全に理解できる人は決して多くありません。多くの場合、「よく分からないが、何となく金利が高いらしい」という印象で終わってしまいます。
そこで本記事では、細かい経済指標の解説よりも、「結局どう考えればいいのか」「自分は何を基準に判断すればいいのか」という点に焦点を当てて考えていきます。
債券投資の大原則

債券投資を考える上で、まず絶対に押さえておかなければならない大原則があります。それは、
- 金利が上がると、債券価格は下がる
- 金利が下がると、債券価格は上がる
という関係です。これは債券投資の世界では常識とも言えるほど重要なポイントで、シーソーのような関係だと考えると分かりやすいでしょう。
この大原則を踏まえると、「いつ債券を買い、いつ売るべきか」という問いに対する基本的な答えが見えてきます。
第一に、金利が上昇している局面では、無理に債券を買う必要はありません。金利が上がり続ける限り、債券価格は下がり続ける可能性が高いからです。
第二に、金利がそろそろ天井に近いと感じられる水準まで来たとき、債券を仕込むという考え方があります。この水準であれば、それ以上大きく債券価格が下がるリスクは限定的になります。
第三に、金利が十分に低下したと判断できる局面では、債券を売却するという選択肢も出てきます。これ以上価格上昇が見込めない状況では、利益を確定することも重要です。
理屈だけ見れば非常にシンプルです。しかし、問題は「これから金利が上がるのか下がるのか」「今の水準が天井なのか底なのか」をどう判断するかという点にあります。
金利の先行きを当てることはできない
結論から言えば、金利の動きを正確に予測することは誰にもできません。株価と同じように、金利も将来どう動くかは不確実です。もし「必ず当たる」と断言する人がいるとしたら、その言葉を鵜呑みにするのは危険です。
現在、世界中の投資家が悩んでいるのは、株価だけでなく金利の先行きも読めないからです。予想外の動きが起こり、損失が出ることもあります。だからこそ、プロであっても苦戦するのです。
大前提として、「金利の未来は誰にも分からない」という事実は、しっかりと頭に入れておく必要があります。
それでも役立つ債券投資のヒント

「分からない」で終わってしまっては、投資判断に役立ちません。そこで、金利の先行きが分からないことを前提にした上で、実践的なヒントを二つ紹介します。
一つ目は、債券の利回りとインフレ率を比べることです。仮に、債券の利回りが5%で、インフレ率が3%前後であれば、差し引きで実質2%程度のリターンが期待できます。この水準を魅力的だと感じるなら、その債券には投資価値があると言えるでしょう。
二つ目は、債券の利回りと株式の利回りを比較することです。例えば、債券の利回りが5%で、株式の配当利回りが4%程度であれば、債券の方が安定的な収入を得られる可能性があります。定期的な収入を重視するのであれば、あえて価格変動の大きい資産を選ぶ必要は薄くなります。
債券の最大のリスクは、発行体が破綻してしまい、元本や利息が支払われなくなることです。しかし、信用力の高い発行体による債券であれば、そのリスクは比較的低いと考えられています。インフレ率を上回る利回りが確保できるのであれば、それを受け入れるという考え方も成り立ちます。
自分なりのシナリオを持つ
債券投資を検討する際には、自分なりのシナリオを描くことが大切です。
例えば、「このあたりの金利水準が一つの天井だろう」「この利回りなら、インフレ率や他の資産と比べても十分魅力がある」「仮に想定より金利が上がったとしても、長期で保有すれば利息収入でカバーできる」といった考え方です。
こうしたシナリオを持てるのであれば、債券は十分に検討に値する投資対象となります。
もっとも、基本となる資産配分は、株式を中心とした分散投資と現金の組み合わせで十分だと考える人も多いでしょう。その上で、リスクを抑えたい場合や、安定した収入を求める場合に、債券や配当を重視した資産を加えるという位置づけが現実的です。
まとめ
景気が底堅く推移し、長期金利が上昇している中で、債券利回りが5%前後に達しているという状況は、確かに注目に値します。この水準になると、債券に興味を持つ人が増えるのも自然な流れでしょう。
重要なのは、「高いか低いか」ではなく、「自分にとっておいしいかどうか」という視点で金利を見ることです。金利の仕組みを理解していれば、不利な金融商品を勧められても冷静に判断できるようになります。
保険は必要最低限に抑え、投資は低コストで合理的に行う。そのためにも、金利を知ることは資産形成の土台となります。金利を知らずして、長期的な資産形成は成り立ちません。これからも、金利に対する感度を高め、賢い判断を積み重ねていきましょう。