先進国と新興国の違い&新興国株投資の落とし穴

定義の曖昧さと新興国株投資で注意すべきポイント

定義の曖昧さと新興国株投資で注意すべきポイント

株式投資を検討していると、「先進国株」と「新興国株」という分類を目にする機会が多くあります。
その際、「中国やロシアのような大国が、なぜ新興国に分類されるのか」「新興国は成長率が高いのだから、投資すれば高いリターンが期待できるのではないか」といった疑問を抱かれる方も少なくありません。

本記事では、先進国・新興国という言葉の定義を整理したうえで、新興国株投資において誤解されやすいポイントや注意点について、できる限り客観的に解説していきます。

先進国と新興国に明確な定義は存在しない

まず押さえておきたい点として、「先進国」「新興国」を分ける唯一の明確な定義は存在しません
国連、世界銀行、研究機関など、それぞれが独自の基準を用いて分類を行っており、統一されたルールはないのが実情です。

その中で、比較的広く用いられている考え方の一つが、「OECD(経済協力開発機構)への加盟国を先進国とみなす」という基準です。
OECDは、経済的に成熟した国々が協力し、発展途上国を支援することを目的とした国際機関であり、現在38か国が加盟しています。

日本の内閣府も、基本的にはこのOECD加盟国を先進国と位置づけています。
一方、OECDに加盟していない国は発展途上国とされ、その中でも特に高い経済成長を遂げている国々が「新興国」と呼ばれるのが一般的です。

なぜ中国やロシアは新興国に分類されるのか

なぜ中国やロシアは新興国に分類されるのか

中国やロシアは、GDPの総額で見ると世界でも上位に位置する大国です。
しかし、先進国かどうかを判断する際には、GDPの総額ではなく、国民一人当たりGDPが重視されることが多くあります。

GDPとは、一定期間に国内で生み出された付加価値の総額を指します。人口の多い国ほどGDP総額は大きくなりやすいため、国全体の規模を示す指標としては有効ですが、国民の生活水準を測るには不十分です。

そこで用いられるのが、一人当たりGDPです。
これはGDPを人口で割った数値であり、国民一人ひとりの経済的な豊かさに近い指標とされています。

世界の一人当たりGDPランキングを見ると、日本は中位に位置し、中国やロシア、メキシコ、トルコなどはそれよりも下位に位置しています。
このため、政治的・軍事的に大きな影響力を持つ国であっても、経済的な成熟度という観点では新興国と扱われるケースが多いのです。

新興国は成長率が高い=投資リターンが高いのか

新興国は一般的に、先進国よりも高い経済成長率が期待されます。
そのため、「新興国株に投資すれば、先進国株よりも高いリターンが得られるのではないか」と考えられがちです。

しかし、実際の投資成果はそれほど単純ではありません。
代表的な新興国株式ETFの長期チャートを見ても、必ずしも右肩上がりの成長を続けているわけではなく、長期間にわたり横ばいで推移している例も確認できます。

この背景には、新興国株投資特有のいくつかのリスクが存在します。

新興国株投資における四つの注意点

新興国株投資における四つの注意点

1.GDP成長率と株価は必ずしも連動しない

経済成長率が高い国ほど株価も上昇する、という考え方は直感的ですが、実証データでは必ずしも支持されていません。
研究によっては、GDP成長率と株式リターンの間に明確な正の相関が見られない、あるいは逆の関係が示されるケースもあります。

経済が急成長する国では、競争激化や利益率の低下、政府介入などが起こりやすく、株主にとって必ずしも有利な環境とは限らない点に注意が必要です。

2.為替変動による影響が大きい

新興国はインフレ率が高くなりやすく、長期的には通貨安につながる傾向があります。
現地通貨建てで株価が上昇しても、為替が大きく下落すれば、投資家の実質的なリターンは相殺されてしまいます。

新興国への投資は、株価変動だけでなく、通貨リスクも同時に負うことになる点を十分に理解しておく必要があります。

3.政治リスクや市場規制の不透明さ

新興国では、政治体制が不安定であったり、政策変更が急に行われたりすることがあります。
また、証券市場のルールや監視体制が先進国ほど整備されていないケースもあり、投資家保護の観点では注意が必要です。

4.期待がすでに織り込まれている可能性

株式投資で高いリターンを得るためには、「市場の期待を上回る成長」が必要です。
新興国はすでに高成長が期待されているため、その期待をさらに超える結果を出さなければ、大きなリターンにはつながりにくい側面があります。

新興国株は上級者向けの投資対象

以上の点を踏まえると、新興国株投資は決して「成長するから安心」という単純な投資対象ではないことが分かります。
長期的な右肩上がりを前提とするよりも、価格変動を活かした中期的な運用が向いていると考えられる場面もあります。

そのため、新興国株は投資経験やリスク管理能力が求められる、やや上級者向けの資産クラスと位置づけるのが現実的でしょう。

おわりに

「新興国=高成長=高リターン」というイメージは、必ずしも事実とは一致しません。
先進国・新興国という言葉の定義自体が曖昧であり、経済成長と投資成果の関係も単純ではないからです。

新興国株に投資する際は、成長性だけでなく、為替、政治、制度、期待値といった複合的なリスクを理解したうえで、慎重に判断することが重要です。

本記事が、新興国株投資を検討される際の冷静な判断材料となれば幸いです。