価格上昇局面で考える資産配分の基本

2024年7月2日、日本経済新聞にて
「金『年内2700ドルへ上昇余地、保有5%推奨』ETF最大手」
という記事が掲載されました。
世界最大級のゴールドETFを運営する企業の関係者が、「資産の約5%を金で保有することが望ましい」と発言した内容です。近年、株価の上昇が続く中で、このようなニュースや論調を目にする機会が増えてきました。
「株価が高水準にあるため、暴落に備えるべきだ」
「債券やゴールドを組み入れてリスクヘッジを」
「安定型の投資商品で守りを固めよう」
こうした話題は、資産運用が活発になる局面では定番とも言えるものです。本記事では、ゴールドの最新状況を整理しつつ、投資初心者はどのような資産配分を考えるべきかについて解説いたします。
ゴールド価格の最新動向
まず、金(ゴールド)の足元の状況を確認しておきましょう。
2024年に入って以降、金価格は堅調に推移しており、世界最大級のゴールドETFの価格は、直近半年で約17%以上上昇しています。なお、この数値はドル建てでの上昇率です。
金価格が上昇している主な要因として、次の3点が挙げられます。
1つ目は、中国やインドの中央銀行による積極的な金の購入です。
2つ目は、アジア地域を中心とした現物需要の増加です。装飾品や金貨、インゴットを実物として保有したいというニーズが根強く存在しています。
3つ目は、中東情勢の悪化など、地政学リスクの高まりによる「有事の金」としての需要です。
これらの要因が重なり、金価格は底堅く推移していると考えられています。実際、日本国内の金小売価格は2024年7月に過去最高値を更新しました。金価格の上昇に加え、円安が進行していることもあり、円建てで見ると短期間で約3割近い値上がりとなっています。
ゴールドは本当に魅力的な投資対象なのか

ここで一度、長期的な視点から主要資産のパフォーマンスを振り返ってみましょう。
2000年末を起点として比較すると、金は約8倍に成長しています。これに対し、米国株や新興国株は約6倍、米国債は約2倍とされています。
このデータだけを見ると、「ゴールドは非常に優れた投資対象である」と感じる方も多いかもしれません。実際、専門家の中には「資産の2~10%程度を金で保有することが合理的」と提言する声もあります。株式などのリスク資産の比率が高いほど、金の割合を増やすべきだという考え方です。
そのため、「自分もゴールドに投資した方が良いのではないか」と考えるのは自然な流れでしょう。
投資初心者への結論:シンプルな資産配分を維持する

こうした状況を踏まえたうえでの結論は、次の通りです。
投資初心者は、株式と現金のみのシンプルなポートフォリオを維持することが合理的です。
例えば、
- 株式80%・現金20%
- 株式50%・現金50%
- 株式30%・現金70%
といった配分が考えられます。ここで言う「株式」とは、全世界株式やS&P500などの低コストなインデックスファンドを想定しています。
このようなシンプルな資産配分をおすすめする理由は、大きく5つあります。
理由① 手間がかからない
債券、ゴールド、暗号資産、不動産クラウドファンディング、ソーシャルレンディングなど、投資対象を増やすほど、調査や管理の手間は増えていきます。
株式インデックスへの積立投資であれば、運用にかかる手間は最小限で済みます。
理由② コストが低い
優良な株式インデックスファンドの運用コストは、年率0.1%未満が一般的です。
一方、ゴールドやその他のファンドを組み入れるほど、全体のコストは確実に上昇します。長期投資において、コストの差は無視できない影響を及ぼします。
理由③ 成長性が十分にある
長期的に見た場合、株式は最も成長力の高い資産クラスです。
過去200年以上のデータを見ても、株式は他の資産を上回る成長を示してきました。ポートフォリオの主軸を株式に置くことで、長期的な成長は十分に期待できます。
理由④ リスク調整が簡単
リスクを取りたい場合は現金を減らして株式を増やし、リスクを抑えたい場合は株式を減らして現金を増やす。この調整だけでリスク管理が可能です。
複数の資産を組み合わせるほど、リスク調整は複雑になります。
理由⑤ 初期段階では「稼ぐ力」の方が重要
資産が少ない段階では、100万円をどう配分するか悩むよりも、月収を数万円増やすことに注力した方が、資産は早く増えます。
資産形成の初期段階では、「お金をどう動かすか」よりも「収入をどう増やすか」の方が重要です。
まとめ
資産運用が注目される局面では、特定の投資商品が強調される記事やニュースが増えがちです。しかし、そのたびに「今すぐ投資しなければならない」と考える必要はありません。
投資初心者にとっては、株式と現金のみのシンプルな資産配分で十分に合理的です。
これは、手間・コスト・成長性・リスク管理のいずれの観点から見ても、バランスの取れた戦略と言えます。
なお、本記事は債券やゴールドを否定するものではありません。投資経験が十分に積み上がり、資産規模が大きくなった段階では、検討する価値が高まる場面もあるでしょう。
まずは基礎を固め、情報に振り回されない投資判断を身につけることが大切です。本記事が、投資初心者の方にとって冷静な判断の一助となれば幸いです。