■お金の基礎講義 ― 守る力を高めるために
日々の暮らしを安定させ、将来の不安を減らすためには、お金を「貯める」「増やす」「稼ぐ」「使う」「守る」という5つの力をバランス良く伸ばすことが不可欠です。この中でも、普段は軽視されがちな「守る力」は、資産を失わずに未来へつなぐための重要な要素です。どれだけ収入を増やし、支出を抑え、投資で育てても、守る力が弱ければ、大切な資産は一瞬で失われてしまいます。詐欺や過度な税負担、災害など、さまざまなリスクに対して「正しい知識」を持っているかどうかが分岐点になります。
本稿では、守る力を育てるための代表的なテーマ――投資判断、不要な営業の断り方、急な収入増への対処、年金の管理、お金の開示と委任の扱い方――の5つをまとめてご紹介します。
1.特定の投資に飛びつかないための視点

近年、さまざまな投資商品への勧誘が続いていますが、流行の投資には「旬」が存在します。ある設備投資型ビジネスなどは、過去に好条件が整っていた時期があり、大きな利益を得た人もいました。しかし、2025年現在では制度変更が進み、利益構造が当時とは異なっています。表面上の利回りだけを鵜呑みにすると、機器の維持費や税金などを差し引いた実質の収益性が見えにくくなり、リスクに対して期待できるリターンが見合わないケースも多くなっています。
また、多くの実物投資には、天候や自然災害・盗難・劣化といった固有のリスクがあります。さらに撤退の際にどれほどの費用や手間がかかるのか、いわゆる「出口」が不透明なまま参入すると、思わぬ損失につながります。資産形成を目指すなら、「流行しているから」という理由ではなく、自分にとって長期的に堅実な投資かどうかを見極める姿勢が欠かせません。
2.不要な営業を断る技術
守る力の一部として、「必要のない営業を断る力」も大きな意味をもちます。保険や金融商品、クレジットカードの追加オプションなど、生活の中でさまざまな営業が訪れますが、断り切れずに契約してしまう人は少なくありません。
断れない理由の多くは、見栄・お人好し・気の弱さから生じる心理です。しかし営業側は、これらの心理を理解し、行動パターンに合わせたアプローチを訓練しています。そのため、最も効果的な断り方はシンプルに「必要ありません」と明確に伝えることです。必要でない理由を挙げると、その理由を切り崩すための営業話法が展開されてしまいます。
どうしても直接的に言いづらい場合は、「自分には決定権がない」「急いでいるので対応できない」といった断り方も有効です。どれも、不要な契約や支出を避け、資産を守るための大切な行動です。
3.急な収入増に振り回されない

相続や資産価値の急増、退職金、昇給、独立後の収入増など、人生にはまれに「急にお金の流れが良くなる時期」が訪れます。しかし、この時に「増えた分をすぐ使う」のは危険です。
手元に入ったお金が、本当に自分のものとして安定的に存在し続けるとは限りません。収入が増えても、それが一時的な流れかもしれませんし、投資で増えた分も市場変動で消える可能性があります。そこで大切なのが「本当に自分のお金かどうか、時間をかけて確認する」という姿勢です。
収入が増えても、数年は生活水準を変えずに様子を見る。投資で急増した資産も、「増えた分」を使わずに、変動を観察する。これにより、お金の流れが変わったときでも、生活が揺らぐことを防げます。
4.年金は自分で管理する時代
過去には、公的年金の記録に大規模な不備が生じた問題がありました。この反省を受け、現在は毎年届く通知やオンラインサービスを通じて、自分で加入記録を確認できる仕組みが整っています。
重要なのは、「加入記録に間違いがないか」を定期的に確認することです。記録漏れがあれば、将来の受給額に直接影響します。また、オンラインで将来の受給額を試算できるサービスを利用すれば、老後資金の計画を立てる際の基礎データとして非常に役立ちます。公的年金は老後の柱となるものです。自分の記録は自分で守る意識が必要です。
5.収入や資産を「誰に話すか」「誰に任せるか」

お金の話をどこまで開示するかという問題も、守る力の重要なテーマです。収入や資産額は、一度伝えると取り消せない極めてセンシティブな情報です。多くの場合、開示によって得られる利益より、リスクの方が大きくなります。
他人が自分のお金を知ったとき、それが好奇心なのか期待なのか嫉妬なのか、こちらが読み切れない感情を呼び起こすことがあります。基本方針としては「誰にも明かさない」が原則です。ただし、賃貸契約の審査や専門家への相談、夫婦の家計管理など、開示することで明確なリターンがある場合には例外的に許容されます。その際も「リスクを大きめ・リターンを小さめ」に想定し、慎重に判断することが重要です。
また、お金を他人に預けたり任せたりする場合は、「分散」と「覚悟」が必須です。万が一何かが起きても受け入れられる相手にのみ、一部だけを託すこと。そのルールを守らない限り、大切な資産を守ることはできません。
■まとめ ― 守る力は目立たないが最強の武器
守る力は、一見すると成果が見えにくい力です。しかし、資産を失うのは一瞬であり、守る力が弱いと、それまで積み上げた努力が簡単に消えてしまいます。逆に、守る力をしっかり身につけておけば、「備えておいてよかった」と思える場面が必ず訪れます。
今日が人生でいちばん若い日です。これからも、焦らずに着実に、お金に振り回されない生き方を一緒に目指していきましょう。