「許せない人」とどう向き合うか
「どうしても許せない人がいます。徹底的に戦うべきでしょうか。それとも、スルーしたほうがよいのでしょうか。」
投資を学び始めたばかりの方から、このような質問をいただくことがあります。
人間関係の悩みは、実は投資と同じくらい、人生の成果を左右する重要なテーマです。しかし、この問いには背景が見えなければ、簡単に答えを出すことはできません。そこで今回は、私自身の経験をもとに、少し時間をかけてお話ししたいと思います。
若い頃の私は、常に戦っていました

十代から二十代前半、仕事を始めたばかりの頃の私は、トラブルの連続でした。職場でもプライベートでも、理不尽なことを言われるたびに腹が立ち、「正義は我にあり」「自分は間違っていないのだから、退く必要はない」と考えていたのです。
自分に非があるときは謝る。しかし、自分が正しいと思っているときは、相手が悪いのだから謝らない。負けないために強くならなければならない。何かあれば戦う覚悟を持つ。
今思えば、私は常に心を尖らせ、戦闘態勢で生きていました。
人生の先輩が教えてくれた「原因自分論」
そんな私に、トラブルの少ない穏やかな人生を歩む先輩方が、ある考え方を教えてくれました。それが「原因自分論」です。
これは「すべて自分が悪い」と自分を責める思想ではありません。他人は変えられないが、自分は変えられる、という現実的な視点です。
相手が悪いと考えるのは簡単です。しかし、その相手と関係を持ったのは誰なのか。社員とのトラブルであれば、その社員を雇ったのは自分。取引先との問題であれば、その取引先を選んだのも自分です。
「自分が悪い」のではなく、「自分に原因があった」と認識する。
これは感情的な対症療法ではなく、原因療法です。投資と同じで、リスクは事後対応よりも予防が最も重要なのです。
正義は、人の数だけ存在する
もう一つ、深く心に残った教えがあります。それは「正義は人の数だけある」ということです。
取引先とのトラブルに悩んでいたある日、先方の社長が一枚の漫画の画像を送ってくれました。そこに書かれていた言葉は、
「どっちも自分が正しいと思っているよ。戦争なんてそんなもんだよ。」
という一言でした。
時代が変われば正義は変わります。
立場が変われば、見える景色も変わります。
自分が「絶対に正しい」と思っているとき、相手もまた同じように自分の正義を信じているのです。
だからといって、相手を認めろ、折れろ、謝れという話ではありません。ただ、人の数だけ正義があると理解すること。それだけで、無用な衝突は大きく減ります。
戦うべきときと、距離を取るべきとき
もちろん、危害を加えられるなら戦わなければならない場面もあります。しかし、そうでないならば、相手を認め、距離を取り、受け流す。関わらないという選択も、成熟した強さです。
目的地が同じ人とは、手段の違いを議論する価値があります。しかし、目的地や思想が違う人と話し合っても、衝突が増えるだけです。時間は有限です。論破しても、何も生みません。
意識を変えたことで、人生は驚くほど静かになった

私が意識して取り組んだことは、次の五つです。
- 原因自分論で考える
- 目的地が違うなら議論しない
- 人の正義にとやかく言わない
- 良い意味で人に期待しすぎない
- 全員に好かれるのは不可能だと知る
この考え方に切り替えてから、私の人生から大きなトラブルは消えていきました。原因から取り除いた結果、周囲には自然と穏やかな人が集まるようになったのです。
投資も人生も、「敵を作らない人」が最後に勝つ

投資でも人生でも、最大の勝利は「敵を作らないこと」です。
意見は持つ。しかし、合わない人に対しては空気になる。人は人、自分は自分。相手の意見を尊重しながら、自分の軸を持つ。
人生の先輩から学んだ二つの教え――
「原因自分論」と「正義は人の数だけある」。
この考え方が、これから投資を学び、人生を築いていく皆さんの支えとなれば、これほど嬉しいことはありません。