一生役立つ!お得に活用する健康保険・国民健康保険の基礎知識
日本では、病気やケガをしたときに誰もが利用する制度として「健康保険」と「国民健康保険」があります。日本は「国民皆保険制度」を採用しているため、国民全員が何らかの公的医療保険に加入する仕組みになっています。この制度は世界的に見ても非常に手厚く、医療機関を自由に選べるうえ、自己負担額は原則3割。さらに医療費が高額になった場合でも、「高額療養費制度」によって後から負担額が戻ってくるという安心の仕組みがあります。
ところが、この健康保険の中身をよく理解していない人が多く、すでに十分な保障があるにもかかわらず、民間の医療保険に重複加入してしまうケースも少なくありません。その状況を受け、2021年には金融庁が保険会社に対し、公的医療保険を正しく説明するよう要請したほどです。また「公的保険ポータル」も開設され、国民が公的医療保険の内容を理解したうえで、必要最小限の民間保険に加入できるよう呼びかけています。
■ 民間医療保険が「必須ではない」理由
民間保険が必ずしも必要でないと言われる理由は大きく2つです。
- 日本の公的医療保険が非常に充実していること
- 民間医療保険は使い勝手が悪い商品も多いこと
医療費の備えとしては、基本的には公的医療保険でカバーし、自己負担分は貯金で備えるというスタンスが合理的と言えます。ただし、貯金が十分でない人が資産形成までの期間だけ民間保険に加入するという選択は「あり」です。
■ 公的医療保険を理解するメリット
公的医療保険の仕組みを理解すると、次のようなメリットがあります。
- 不要な医療保険への加入を避けられる
- 健康保険や国民健康保険の節約方法が分かる
- 副業や独立するときに役立つ知識になる
生涯にわたって必ず関わる制度だからこそ、一度きちんと学んでおくことで一生役立ちます。
■ 日本で加入する公的医療保険の種類
日本では次のいずれかの公的医療保険に加入します。
● 健康保険
会社員・公務員が加入する保険です。
健康保険はさらに次の3種類に分かれます。
- 協会けんぽ(全国健康保険協会)
中小企業の従業員が加入 - 健康保険組合(組合健保)
大企業などが独自に運営 - 共済組合
公務員が加入
健康保険組合や共済組合は保険料が安く、保障が手厚い傾向があります。ただし、どの健康保険に加入するかは会社ごとに決められており、従業員が選ぶことはできません。
● 国民健康保険
自営業者・フリーランスなどが加入します。
国民健康保険は次の2種類があります。
- 市町村国保(その市町村の住民が対象)
- 国保組合(職業団体などが運営)
国保組合は保険料が一定で安いことが多いため、自分の職業で加入できる組合がないか調べてみる価値があります。
● 後期高齢者医療制度
75歳以上が加入します。
■ 協会けんぽの保険料と特徴
協会けんぽの保険料率はおおむね給与(標準報酬月額)の約10%で、このうち半分は会社が負担します(労使折半)。
保険料率は都道府県ごとに異なり、会社の所在地で決まる点に注意が必要です。
■ 健康保険組合との違い

健康保険組合は次の点が協会けんぽと異なります。
- 保険料率を独自に決められる
- 会社負担が大きく従業員負担が50%未満になることが多い
一般的に協会けんぽより保険料が安いため、大企業の社員は健康保険料の負担が軽くなりやすい傾向があります。
■ 健康保険料の計算方法と注意点
健康保険料は、
- 月給 → 標準報酬月額×保険料率
- ボーナス → 標準賞与額×保険料率
で計算されます。
標準報酬月額は4〜6月の給与を基準に決まるため、この時期の残業時間を調整すべきか迷う人もいます。しかし、標準報酬月額が下がれば保険料は下がりますが、傷病手当金や出産手当金も減るため、単純に得とは言い切れません。
■ 会社員と副業の関係:副業収入には健康保険料がかからない

公的医療保険の加入ルールは次の通りです。
- 健康保険と国民健康保険の二重加入は不可
- 会社員は「給与部分」に対してのみ健康保険料がかかる
- 副業(業務委託・雑所得など)には保険料はかからない
そのため、
会社員として安定収入と手厚い保障を確保しつつ、副業で収入を増やしても保険料は増えない
という大きなメリットがあります。社会保険料の負担が重い日本において、副業との組み合わせは非常に賢い選択です。
■ 130万円の壁・106万円の壁
パートやアルバイトが働く際に気になるのが「扶養の壁」です。
● 130万円の壁(健康保険の扶養)
夫(または妻)が会社員の場合、配偶者は収入が一定以下なら健康保険の扶養に入れます。
ただし判断基準は「今後1年間の収入見込み」であり、1〜12月の年収ではありません。各企業の判断基準も微妙に異なるため、必ず夫・妻の勤務先に確認しましょう。
● 106万円の壁(社会保険加入義務)
次の条件を満たすと、自分自身が社会保険に加入しなければならなくなります。
- 従業員101人以上の企業で働く
- 月収88,000円以上
- 週20時間以上勤務
- 2ヶ月超の勤務見込み
130万円の壁と合わせて混乱しがちですが、相談すべき相手が違います。
- 130万円→夫(妻)の勤務先
- 106万円→自分の勤務先
夫が自営業で国民健康保険の場合、130万円の壁はそもそも関係ない点にも注意が必要です。
■ 国民健康保険の仕組み(自営業・フリーランス)
市町村国保の保険料は次の要素で計算されます。
- 所得割(課税所得に応じて決まる)
- 均等割(人数に応じた固定額)
- 平等割(1世帯あたりの固定額)
- 資産割(固定資産税に応じて決まる)
近年は所得割と均等割のみの自治体が増えています。
■ 国民健康保険を安くする方法

次の方法が効果的です。
- 経費や控除を活用し課税所得を下げる
- マイクロ法人を活用する
- 安い自治体に引っ越す
- 国保組合に加入する
特に国保組合は「所得に関係なく保険料が一定」という特徴があり、収入が高い人ほどお得です。
(例:文美国保 → 本人24,800円、家族14,800円/月)
■ マイクロ法人の活用(上級編)
個人事業主として所得が増えると国民健康保険料が高額になります。そのため、
- 法人を設立し、役員報酬を最低限に設定して協会けんぽに加入
- 事業の収入は個人事業として得る
という方法をとると、健康保険と国民健康保険の二重加入はできないため「健康保険が優先」され、個人事業側の収入には保険料がかかりません。
■ まとめ
日本の公的医療保険は、世界でもトップクラスに手厚い制度です。しかし仕組みが複雑で、多くの人が十分理解できていません。その結果、必要以上の民間保険に加入したり、保険料の節約チャンスを逃したりするケースが多く見られます。
健康保険・国民健康保険の仕組みを知れば、
- 不要な保険料をカットできる
- 副業や独立の際に賢く使える
- 生涯の生活設計に役立つ
という大きなメリットがあります。
公的医療保険は一生関わる制度です。ぜひ今日から正しい知識を身につけ、賢く、そしてお得に活用していきましょう。