借金と保険から距離を置こう

――「保険がお得だから家を買う」という発想の落とし穴――

お金について情報発信や相談対応を続けていると、強く感じることがあります。
それは、多くの人が借金と保険に対して、あまりにも無防備で、あまりにも好意的だということです。

今すぐ欲しいものがある。でも手元にお金が足りない。
だからリボ払いで買う。
車はカーローン。
家は住宅ローン。

将来がなんとなく不安だから、生命保険に入る。
外貨建て保険、変額保険、個人年金保険……。

こうした相談は本当に多く、体感としては「借金か保険の話が半分以上」と言っても過言ではありません。

そして今回のテーマである団体信用生命保険(団信)は、まさにその両方がセットになった存在です。
借金と保険が一体化しているため、多くの人が疑問を持たないまま受け入れてしまう。
だからこそ、ここで判断を誤ると、いわゆる「小金持ち」からは確実に遠ざかってしまいます。

これから家を買おうとしている人も、
すでに住宅ローンを組んだ人も、
そもそも持ち家に興味がない人も、

全員に知っておいてほしい話です。

団信とは何か

団信とは何か

まずは基本から整理しましょう。

団信とは「団体信用生命保険」の略称です。
住宅ローンの借り手が、死亡または高度障害、あるいは重い病気になった場合に、
保険金によって住宅ローン残高がゼロになる保険を指します。

一家の大黒柱が亡くなった場合でも、残された家族に住宅ローンが残らない。
そう聞くと、とても心強い制度に思えますよね。

ただし、ここで忘れてはいけない視点があります。
団信は、まず銀行のための仕組みだということです。

銀行にとって、住宅ローンは「回収できてこそ意味がある商品」です。
借り手が亡くなり、多額の借金が回収不能になれば大問題。
そこで銀行は、借り手に生命保険へ加入してもらい、
万が一の際は保険会社に借金を肩代わりさせる仕組みを作りました。

これが団信の本質です。
そのため多くの金融機関では、住宅ローンを組む際に団信加入が義務付けられています。

団信の種類

団信は大きく分けて2種類あります。

① 一般団信
死亡または高度障害になった場合に、住宅ローン残高がゼロになる基本的なタイプです。
多くの場合、加入は必須で、保険料は「無料」とされています。

② 疾病団信(特約付き団信)
死亡や高度障害に加えて、がんや三大疾病などでも保険金が支払われるタイプです。
こちらは任意加入で、
保険料を別途支払う
・もしくは住宅ローン金利を0.1%~0.2%上乗せ

といった形になります。

ここまでが一般的な知識です。

団信は悪いものではない

団信は悪いものではない

まず結論から言いましょう。
団信そのものは、決して悪い商品ではありません。

ただし、多くの人が誤解している点があります。
それは「一般団信は無料でお得」という認識です。

確かに、別途保険料を請求されることはありません。
しかしそれは、「本当に無料」という意味ではありません。

銀行は営利企業です。
ボランティアで保険料を肩代わりしてくれることなど、あるはずがありません。

住宅ローン金利には、
人件費
・店舗運営費
・システム費用
・そして団信の保険料
こうしたあらゆるコストが、あらかじめ織り込まれています。

「請求されない=無料」ではない。
この違いを理解できないと、世の中の「無料」という言葉に簡単に騙されてしまいます。

とはいえ、団信の保険料は、民間の生命保険と比べると割安なケースが多いのも事実です。
団体で一括加入するスケールメリットや、銀行が保険料徴収を代行することによる運営コスト削減があるからです。

そのため、団信の特約を活用し、
民間保険を見直して保険料を下げられるケースがあることも否定できません。

この点において、団信は「合理的な保険」と言える側面があります。

「団信がお得だから家を買う」はありえない

問題はここからです。

「団信があるから、家を買ったほうがお得」
この発想は、はっきり言ってナンセンスです。

この論理、どこかで聞いたことがありませんか?

そう、新築ワンルームマンション投資の営業トークとまったく同じ構造です。

「新築だから長期ローンが組めます」
「節税になります」
「団信があるので生命保険代わりになります」

どれも本体の価値とは無関係な“おまけ”です。

本当に価値のある商品であれば、
立地、価格、需要、将来性といった本質的な魅力だけで勝負できます。

にもかかわらず、
節税だの、保険代わりだの、オプションばかりを強調する。
それはつまり、本体に語るべき価値がないということです。

マイホーム購入は、不動産という高額資産を買う行為です。
浪費として楽しむのか、投資として価値を求めるのか。
どちらにしても、判断基準は「家そのもの」であるべきです。

団信はあくまでおまけ。
おまけを理由に数千万円の借金を背負う判断は、冷静とは言えません。

借金と保険から一歩引く

借金と保険から一歩引く

団信は、借金と保険がセットになった象徴的な存在です。
世の中には、
借金させたい人と、借金したい人。
保険に入らせたい人と、保険に入りたい人。
そうした利害が噛み合って、経済は回っています。

しかし、小金持ちを目指すなら、
この流れから意識的に距離を置く必要があります

借金は極力しない
・保険は必要最低限にする

これだけで、家計管理も資産形成も、驚くほどシンプルになります。
お金も時間も、より重要なことに集中できるようになります。

「お得そうに見えるおまけ」が、
実は貧乏への招待状であることは少なくありません。

どうかそのことを、頭の片隅に置いておいてください。