アメリカでビットコインのETFが誕生。適切な距離感とは?

 ビットコインは「投機」から「投資」へ進んだのか

年明け早々、暗号資産をめぐる大きなニュースが報じられました。海外の金融当局が、暗号資産を運用対象とする上場投資信託を正式に認めたというものです。
この出来事は、「暗号資産がついに公的に認められた投資対象になったのではないか」と、多くの人に強い印象を与えました。

暗号資産が誕生してからすでに十数年が経過しています。これまで何度も制度化への挑戦はありましたが、長い間認められることはありませんでした。それが今回、ようやく承認に至ったという点で、歴史的な節目だと受け止められています。

誤解を恐れずに言えば、「これまで怪しいもの、危ないものと見られがちだった暗号資産が、一定のルールのもとで扱われる投資対象として認識された」と言えるでしょう。

上場投資信託とはどんな仕組みか

今回のニュースを理解するうえで欠かせないのが、「上場投資信託」という仕組みです。
これは簡単に言えば、多くの人から集めたお金をまとめて運用する投資商品です。株式市場で売買できるため、株と同じ感覚で取引できる点が特徴です。

暗号資産を対象とする上場投資信託は、暗号資産そのものを直接保有するのではなく、価格の動きに連動する形で投資する仕組みになっています。
イメージとしては、暗号資産を一つずつ自分で管理する代わりに、「詰め合わせパック」を購入するような感覚に近いでしょう。

価格が上がれば評価額も上がり、価格が下がれば評価額も下がる。非常にシンプルな構造です。

現物の暗号資産が抱える課題

では、なぜこの仕組みが注目されているのでしょうか。
それは、暗号資産を直接保有する場合にいくつか無視できない弱点があるからです。

まず一つ目は、自己管理の難しさです。
暗号資産は自分で保管する必要があり、管理方法を誤ると不正アクセスや紛失といったリスクにさらされます。パスワードを忘れただけで資産に二度とアクセスできなくなるケースもあります。

二つ目は、投資家保護の仕組みが弱い点です。
相場操作や詐欺、不正行為などが起こりやすく、トラブルが起きた際に十分な救済が受けられないことも少なくありません。

三つ目は、税務面の負担です。
売却益が他の所得と合算される仕組みになっており、税率が高くなりやすい上、手続きも煩雑です。

これらはいずれも「ちょっとした欠点」と片付けられるものではなく、投資を躊躇させる大きな要因になってきました。

上場投資信託がもたらすメリット

こうした弱点を補う形で登場したのが、暗号資産を対象とする上場投資信託です。

最大のメリットは、自分で管理する必要がないことです。
専門機関が保管・管理を行うため、ハッキングや管理ミスの不安は大幅に軽減されます。

次に、一定のルールと監視のもとで運用される点が挙げられます。
制度の枠内で扱われるため、不正が起こりにくく、投資家保護の面でも改善が期待されます。

さらに、税務上の取り扱いがシンプルになる可能性があります。
他の金融商品と同様の扱いとなれば、税率が抑えられ、申告の手間も軽くなります。

こうした理由から、これまで暗号資産に距離を置いていた機関投資家や慎重な個人投資家が、新たに市場へ参加するのではないかと期待されています。

期待と冷静さは別問題

期待と冷静さは別問題

過去を振り返ると、ある資産が上場投資信託として制度化されたことをきっかけに、価格が長期的な上昇基調に入った例もあります。
そのため、「今回も同じことが起こるのではないか」と期待する声が出るのは自然な流れでしょう。

しかし、期待が大きいときほど、冷静な視点が必要です。

そもそも今回の動きは海外市場の話であり、すぐに誰もが簡単に投資できる環境が整っているわけではありません。また、上場投資信託には独自の弱点も存在します。

上場投資信託ならではの注意点

上場投資信託には、管理コストがかかるという特徴があります。
保管や運用にかかる費用は、長期で見るとリターンを押し下げる要因になります。

また、取引時間が限られる点も重要です。
暗号資産そのものは常に取引されていますが、上場投資信託は市場が開いている時間しか売買できません。

さらに、運用実績が浅いため、価格との連動性がどこまで安定するのかは、まだ時間をかけて見極める必要があります。そして、当然ながら支払い手段として使うことはできません

資産形成の主役にするべきか

結論として、暗号資産を資産形成の中心に据える考え方には慎重であるべきだと考えます。
暗号資産は新たな価値を生み出すというより、価格変動による利益を狙う性質が強く、値動きも非常に激しいからです。

仮にポートフォリオに組み入れるとしても、それはあくまで「万が一に備える保険」のような位置づけにとどめるのが無難でしょう。
割合としても、ごく一部に限定するのが現実的です。

また、投資を検討するのであれば、上場投資信託としての運用実績が十分に積み上がってから判断するべきです。少なくとも数年は様子を見る姿勢が必要でしょう。

値動きの激しさを忘れてはいけない

暗号資産は、短期間で大きく値上がりすることもあります。その話を聞くと、つい魅力的に感じてしまう人も多いはずです。
しかし、その裏側で何度も大暴落を経験してきた事実を忘れてはいけません。

過去には、半分以下、あるいはそれ以上に価値が下がった局面が何度もありました。
この激しい値動きに耐えられず、多くの人が途中で市場から離脱しています。冷静な判断力と強い精神力がなければ、長く付き合うのは難しい資産だと言えるでしょう。

再現性の高い資産形成とは何か

再現性の高い資産形成とは何か

安定した資産形成を目指すのであれば、まず取り組むべきことはもっと基本的な部分です。

  • 家計管理を徹底し、支出を把握する
  • 分散された株式投資を軸にポートフォリオを組む
  • 収入を増やす努力を続ける

これらは地味ですが、再現性が高く、多くの人にとって現実的な方法です。

暗号資産については、無理に手を出す必要はありません。世の中の動きを知る一環として情報を追い、「今こういう変化が起きているのだな」と理解する程度で十分でしょう。

時間とエネルギーは、基本を磨くことに使う。
それが、遠回りのようでいて、最も堅実な道だと言えるのではないでしょうか。