年収3600万円でも満たされない国が映し出す「お金の正体」
年収25万ドル、日本円で約3600万円。
この数字を見て、「それだけ稼げば、悩みはなくなるのでは」と感じる人は少なくないでしょう。ところがアメリカでは、この水準の収入を得ていても、自分を金持ちだと思えない人が大勢います。むしろ「普通の中流家庭」と認識しているのです。
これは贅沢な愚痴ではありません。今のアメリカ社会では、高収入と安心感が、必ずしも結びつかなくなっています。この現象は、私たち日本の社会人にとっても、決して他人事ではありません。
数字上は成功、それでも心が追いつかない理由
年収25万ドルは、アメリカでは収入上位10%に入ります。統計的には、間違いなく「成功者の側」です。本人たちも、自分が平均以上に稼いでいることは理解しています。
それでも、心のどこかで「余裕がある」と言い切れない。なぜなら、生活を支えるコストが、稼ぎのスピードを上回る勢いで増えているからです。収入は増えても、安心感が置き去りにされている状態だと言えます。
家を持つことが「挑戦」になった社会

象徴的なのが住宅コストです。アメリカの住宅価格は、過去5年間で全国平均45%上昇しました。南カリフォルニアの一部地域では57%にもなっています。
その結果、家を買うという行為は、「人生の自然な通過点」ではなく、「覚悟のいる投資」へと変わりました。頭金として約3000万円を用意し、金利7%近い住宅ローンを背負い、毎月50万円以上を返済する。年収25万ドルでも、これを続けるのは決して楽ではありません。
住居は本来、生活を安定させるためのものです。しかし現実には、家を持つこと自体が新たな不安を生み出しています。
教育費が未来への期待を削っていく
教育コストも、家計を静かに、しかし確実に圧迫します。高収入世帯では、子ども1人あたり年間7万5000ドル、約1100万円の学費がかかると言われています。
これは「教育への投資」という美しい言葉で語られがちですが、実態は長期にわたる固定費です。選択を誤れば、家計の自由度を何十年も縛り続けることになります。食費、光熱費、ガソリン代、保険料なども軒並み上昇し、「何にお金を使っているのかわからないのに、なぜか残らない」という感覚が広がっています。
稼いでいるのに不安が消えない社会

ミシガン大学の調査では、世帯年収13万ドル以上の層で「前年より暮らし向きが良くなった」と感じている人は26%しかいませんでした。これは2009年以来の低水準です。
高収入であっても、インフレ、リストラ、政策不安が重なり、「今は大丈夫でも、先はわからない」という感覚が常につきまとっています。ここに、現代の不安の正体があります。
問題は収入ではなく「設計図」の有無
重要なのは、アメリカが貧しくなったわけではないという点です。客観的に見れば、依然として豊かな国です。それでも満たされないのは、お金の使い方に設計図がないまま、流れに乗ってしまう人が多いからです。
稼いだ分だけ使い、周囲の基準に合わせ、労働収入だけに依存する。これは、アクセルを踏み続けながら、ブレーキの位置を知らない運転に似ています。どこかで不安になるのは当然です。
余裕を感じている人は何が違うのか
同じ高収入層でも、満足している人は確かに存在します。年収20万〜30万ドルの層の約4分の3は、自身の経済状況に満足しています。
彼らは特別な才能を持っているわけではありません。ただし、共通点があります。貯蓄率を20%以上に保ち、他人の価値観ではなく自分の価値観でお金を使い、労働収入以外の柱を少しずつ育てている点です。つまり、お金を「感情」ではなく「仕組み」で扱っています。
日本人にとっての最大のチャンス
この話は、日本で働く私たちにとって、むしろ希望でもあります。日本では、年収3600万円を稼がなくても、正しい知識と習慣があれば、十分な余裕と安心を手に入れることができます。
鍵となるのは、「お金にまつわる5つの力」をバランスよく育てることです。
人生を安定させる5つの力

1つ目は、ためる力。支出を把握し、残る仕組みをつくること。
2つ目は、増やす力。時間を味方につけて資産を育てること。
3つ目は、稼ぐ力。収入の可能性を広げ続けること。
4つ目は、守る力。リスクを理解し、資産を減らさないこと。
5つ目は、使う力。満足度の高い使い方を選ぶこと。
お金は「多さ」ではなく「扱い方」で差がつく
稼ぐこと自体は、もちろん大切です。しかし、それだけでは安心は手に入りません。お金は、増やすものでもあり、守るものでもあり、人生を豊かにするための道具でもあります。
アメリカの現実は、そのことを極端な形で私たちに教えてくれています。数字に振り回されず、自分なりの基準を持つこと。それが、長く安定した人生をつくる最も確実な方法なのです。
焦らず、学び続けながら、お金に困らない自由な生活を目指していきましょう。