副業・兼業が広がらない日本社会の現状と、これから起こりうる変化

近年、「副業」や「兼業」という言葉を耳にする機会が増えてきました。収入源を複数持つことで生活の安定を図ったり、自分のスキルを活かして新たな挑戦をしたりする働き方として注目されています。しかし、実際に副業や兼業を行っている人の割合は、驚くほど低い水準にとどまっています。ある公的調査によると、副業や兼業をしている労働者は全体のわずか数%に過ぎないという結果が示されています。
この数字からは、「副業解禁」という言葉が先行する一方で、現実には制度や慣習の壁が厚く、多くの人が一歩を踏み出せずにいる状況がうかがえます。なぜ副業・兼業は広がらないのでしょうか。そして、この状況は今後変わっていくのでしょうか。
副業・兼業を認める企業はまだ少数派
副業・兼業が進まない理由の一つに、企業側の姿勢があります。調査結果を見ると、従業員の副業や兼業を明確に認めている企業は全体の4分の1程度にとどまっています。一方で、「雇用契約を結ばない形であれば認める」とする企業や、「原則として認めない」とする企業も一定数存在しています。また、「実態を把握していない」という企業も少なくありません。
このように、企業ごとに対応がばらばらであることが、労働者にとって副業・兼業を始めにくい要因となっています。制度として明確に整備されていない場合、許可が必要なのか、どこまで認められるのかが分からず、結果として挑戦を諦めてしまう人も多いのです。
副業・兼業を阻む最大の壁「労働時間の通算」

副業・兼業が広がらない最大の理由として指摘されているのが、労働時間の管理ルールです。現行の制度では、複数の職場で働く場合、それぞれの労働時間を合算して管理する必要があります。一定の時間を超えると、割増賃金の支払い義務が発生する仕組みになっています。
例えば、本業で所定の労働時間をすでに働いた人が、別の会社で数時間働いた場合、その副業分の労働時間はすべて時間外労働として扱われます。そうなると、副業先の企業は通常よりも高い人件費を負担しなければならず、副業人材の受け入れに消極的にならざるを得ません。
この仕組みは、労働者を守るために設けられたものですが、結果として副業・兼業の普及を妨げる要因にもなっています。
現場から上がる実務上の課題
実際の現場では、さらに具体的な問題が指摘されています。企業ごとに締め日や労働時間制度が異なるため、複数の会社にまたがって労働時間を正確に管理することが非常に難しいという声が多く上がっています。
また、「労働時間を通算しない形に制度を見直してほしい」という要望も少なくありません。こうした現場の声を受け、専門家による検討の場では、労働時間の通算管理そのものを見直すべきかどうかが議論されています。制度改正が実現すれば、副業・兼業を取り巻く環境は大きく変わる可能性があります。
副業・兼業を後押しする時代の流れ
国としては、副業・兼業を前向きに捉える動きが強まっています。人材が一つの組織に固定されるのではなく、複数の分野や業界を行き来することで、成長分野に人が集まりやすくなり、経済全体の活性化につながると考えられているからです。
また、個人にとっても、副業・兼業は収入の柱を増やすだけでなく、スキルアップやキャリアの選択肢を広げる手段になります。一つの仕事に依存しすぎない働き方は、将来の不安を軽減する意味でも重要性を増しています。
これから求められる個人の視点

制度の見直しが進めば、副業・兼業は今よりも身近な選択肢になるでしょう。しかし、制度が整うのを待つだけでなく、個人としても「どのような働き方をしたいのか」「自分にはどんな価値を提供できるのか」を考えておくことが大切です。
副業・兼業は、単に収入を増やす手段ではありません。自分の得意分野を活かしたり、新しい分野に挑戦したりすることで、人生の選択肢そのものを広げてくれます。その一方で、時間管理や体調管理、責任の持ち方など、求められる意識も高くなります。
まとめ
現在、副業・兼業をしている人の割合はごくわずかにとどまっています。その背景には、企業側の慎重な姿勢や、労働時間の通算管理といった制度上の課題があります。しかし、時代の流れとしては、副業・兼業を後押しする方向に進んでおり、制度改正が行われる可能性も高まっています。
働き方の選択肢が広がることは、個人にとっても社会にとっても大きなメリットがあります。変化の兆しが見え始めている今こそ、自分自身の働き方や収入のあり方について、改めて考えてみる価値があるのではないでしょうか。