取扱注意:夫婦で組む住宅ローンの光と影
― ペアローンの仕組み・メリットと見落としがちなリスク ―
住宅価格の上昇が止まりません。特に都市部では、新築・中古を問わず住まいの価格は右肩上がりが続いており、平均的な会社員が単独の収入だけで住宅を購入することが難しい時代になっています。
こうした背景から、最近増えているのが**夫婦で住宅ローンを組む「ペアローン」**という選択肢です。
共働き世帯の増加とともに、この借り方は今後さらに一般化していくと考えられます。しかし、ペアローンは便利である一方、扱いを誤ると家計に大きな負担を残す危険性もはらんでいます。
本記事では、ペアローンの基本的な仕組みから、メリット・デメリット、そして「どんな人なら有効に活用できるのか」までを丁寧に解説します。
ペアローンとは何か

ペアローンとは、夫婦それぞれが住宅ローンを1本ずつ契約し、合計2本のローンで1つの住宅を購入する方法です。
たとえば、購入価格が5,000万円の住宅を、夫が3,000万円、妻が2,000万円という形で分けて借り入れます。
この場合、夫婦はお互いのローンの連帯保証人となり、実質的には「運命共同体」として返済を続けていくことになります。
よく混同されがちな方法に「収入合算」がありますが、こちらはローン自体は1本のみで、配偶者は補助的な立場です。
ペアローンはローンが2本存在する点が、後々の税制やリスクに大きな違いを生みます。
ペアローンが選ばれる理由
近年、共働き世帯が増えたことで、夫婦2人の収入を前提とした住宅購入が当たり前になりつつあります。
若い世代ほどペアローンの利用率が高い傾向にあり、「2人で支える住宅」という考え方が浸透してきていると言えるでしょう。
では、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ペアローンのメリット5選

① 借入可能額を増やせる
単独ローンでは希望額に届かない場合でも、2人で借りることで選択肢が広がります。
結果として、立地や広さなど、条件の良い物件を選べる可能性が高まります。
② 借入条件を柔軟に設計できる
2本のローンを別々に組むため、金利タイプや返済期間をそれぞれ調整できます。
金利や返済計画に詳しい人にとっては、戦略的な設計が可能です。
③ 夫婦それぞれが団体信用生命保険に加入できる
万が一の事態が起きた場合でも、それぞれのローンに対して備えがあるのは安心材料です。
④ 税制優遇を2人分活用できる
一定条件を満たせば、住宅ローンに関する税制上の優遇を夫婦それぞれが受けられます。
結果として、節税効果が大きくなる可能性があります。
⑤ 将来売却時の税制面で有利
住宅を売却して利益が出た場合、非課税枠を2人分活用できる点も見逃せません。
見逃せないペアローンのデメリット5選

メリットだけを見るのは危険です。次に、必ず理解しておくべき注意点を見ていきましょう。
① 配偶者の返済も背負う責任
ペアローンでは、相手が返済できなくなった場合、その分も自分が負担する義務があります。
「自分の分だけ返せばよい」という考えは通用しません。
② 諸費用が2本分かかる
契約が2つになるため、事務手数料や登記費用なども増えます。
長期的には繰り上げ返済や借り換え時のコストも倍になる可能性があります。
③ 片方が亡くなってもローンは完全に消えない
万が一の場合、亡くなった方のローンは保険で消えても、残された側のローンはそのまま残ります。
④ 離婚時の処理が非常に複雑
共有名義・連帯保証という構造上、離婚時には売却・返済・名義変更のすべてが難航しがちです。
離婚しても連帯保証の責任は消えません。
⑤ 離職・減収リスクへの耐性が必要
出産、病気、転職などで収入が減った場合、返済計画が一気に崩れる可能性があります。
「今は大丈夫」という前提は、将来も続くとは限りません。
結論:ペアローンを勧められる人とは
ペアローンは、誰にとっても得になる万能な制度ではありません。
有効に活用できるのは、次の条件を満たす人です。
- 借入額を増やしても、資産価値の高い住宅を選べる
- 金利や返済計画を長期視点で設計できる
- 保険や税制を含めた全体最適を考えられる
- 万が一の売却時にも、債務超過になりにくい物件を選べる
つまり、「2人なら買えるから買う」ではなく、
「2人で組むからこそ経済的に合理的になる」場合にのみ選ぶべき方法だと言えます。
まとめ
住宅購入は人生最大級の決断です。
ペアローンは、その選択肢を広げてくれる一方で、リスクも同時に拡大します。
大きなリスクは、正しく理解し、管理できる人にだけ扱えるもの。
理想の暮らしを支えるはずの住まいが、将来の足かせにならないよう、冷静な判断を心がけましょう。
今日が、これからの人生設計を見直すきっかけになれば幸いです。