経験の浅い人が長期投資を継続できないたった1つの理由

長期投資の下落局面で「本当に株価は戻るのか」と不安になるあなたへ

長期投資の下落局面で「本当に株価は戻るのか」と不安になるあなたへ

長期投資を続けていると、避けては通れない局面があります。それが「大きな下落」です。相場が順調に右肩上がりのときは、将来に対して楽観的でいられます。しかし一転して株価が下落し、評価額が目に見えて減っていくと、「本当にまた元に戻るのだろうか」「今回はこれまでと状況が違うのではないか」と不安に駆られてしまいます。

では、投資経験を積めば、この不安は自然と消えるのでしょうか。結論から申し上げると、経験は確かに助けになりますが、根本的な問題は「含み損に耐えられるかどうか」にあります。長期投資が続かない最大の理由は、含み損に耐えられないことに尽きるのです。

なぜ含み損に耐えられないのか

資産運用の目的は、言うまでもなく「お金を増やすこと」です。誰もが資産を増やしたいからこそ投資を始めます。にもかかわらず、目の前で資産が減っていくと、「続ける意味があるのか」と感じてしまうのは自然な反応です。

人間は本能に忠実な生き物です。たとえば、勢いよく飛んできたボールが自分の顔に向かってきたら、とっさに目をつぶり、腕で顔を守ろうとするでしょう。しかし、ゴールキーパーがそれをしてしまっては試合になりません。彼らは訓練によって恐怖を克服し、ボールに向かっていきます。

投資も同じです。長期的な利益を得るためには、短期的な恐怖や本能に逆らわなければならない場面が何度も訪れます。10年、20年先の成長を見据えるのであれば、目先の含み損を受け入れる覚悟が必要になるのです。含み損が出るたびに投資をやめていては、長期投資は成立しません。

含み損に耐えられない3つの要因

含み損に耐えられない3つの要因

では、なぜ多くの人が含み損に耐えられないのでしょうか。主な要因は3つあります。

① 複利を説明するグラフの誤解

投資の世界では、複利効果を示す右肩上がりのグラフをよく目にします。年利5%や6%で運用できれば、数十年後にはこれだけ増える、というあの図です。しかし、あのグラフはあくまで「結果の一例」を示しているにすぎません。

本来の順序は、「何年後にいくらになったか」という事実があり、その結果として「年利○%だった」とわかるものです。株式投資において「毎年○%で運用できる」という保証はありません。年利は結果であり、約束された数字ではないのです。

ところが、多くの人はグラフのイメージをそのまま受け取り、「毎年なだらかに増えていく」と誤解してしまいます。実際の相場はジグザグに上下を繰り返します。途中経過が想定と違えば、「こんなはずではなかった」と投資をやめてしまうのも無理はありません。

② 絶対リターンを求めすぎる

多くの個人投資家が求めているのは「絶対リターン」、つまり毎年プラスになることです。

仮に市場全体が-30%となった年に、ある運用商品が-20%で済んだとします。市場平均よりは優秀です。しかし投資家の本音は「それでもマイナスはマイナス」というものです。相対的に優れていても、自分の資産が減っていれば納得できないのです。

市場環境が悪ければ損失が出る年もある、という事実を頭で理解していても、感情はそれを受け入れません。毎年必ずプラスを出すことは極めて困難です。絶対リターンに固執する限り、下落局面での継続は難しくなります。

③ 下落が永遠に続くと錯覚する「直線本能」

人間には、トレンドが続くと「このまま永遠に続く」と思い込む傾向があります。上昇が続けば永遠に上がり続けるように見え、下落が始まればどこまでも下がり続けるように感じてしまいます。

しかし実際の市場は循環します。景気も相場も、拡大と後退を繰り返してきました。それでも下落局面では、「もう二度と戻らないのではないか」という恐怖に襲われます。この恐怖こそが、損切りを早め、長期投資を断念させる大きな原因です。

経験を積めば解決するのか

投資経験が長くなれば、過去に回復した局面を知っている分、落ち着いて対処できる可能性は高まります。しかし経験だけで恐怖が完全になくなるわけではありません。

大切なのは、「本能に逆らう訓練」を積むことです。毎年同じリターンになるという幻想を捨て、市場平均を受け入れ、ジグザグの値動きを前提に構える姿勢を持つこと。これが長期投資を続ける土台になります。

長期のインデックス投資とは、右肩上がりを信じつつも、途中の右肩下がりに過剰反応しない投資です。絶対リターンを毎年求めるのではなく、長期的な成長の果実を待つ姿勢が求められます。

高配当株投資という別の考え方

一方で、配当金を重視する投資という選択肢もあります。こちらは「株価が毎年上がること」よりも「毎年安定した配当を受け取ること」に重きを置きます。価格変動よりもキャッシュフローに注目する投資法です。

もちろん、どの手法にも一長一短があります。重要なのは、自分の目的に合った方法を選ぶことです。成長を狙うのか、安定収入を重視するのか。野球をしたいのにサッカーボールを持っていては意味がありません。目的と手段が一致しているかを常に確認することが大切です。

最後に:投資以上に大切なこと

最後に:投資以上に大切なこと

投資の世界に絶対の正解はありません。何が起きるかは誰にもわかりません。だからこそ、自分で考え、自分で行動する姿勢が求められます。

そして忘れてはならないのは、株式投資以上に重要なのは「自己投資」だということです。投資は規模の世界です。元手が小さければ、リターンも小さいのが現実です。収入を増やし、投資に回せる資金を増やす努力こそ、長期的な資産形成の土台となります。

長期投資を継続するために必要なのは、経験年数そのものではありません。本能に逆らい、含み損を受け入れ、市場の上下動を前提に構える姿勢です。その訓練を積み重ねたとき、下落局面でもぶれない自分をつくることができるのではないでしょうか。