インデックスファンドの取り崩し方法

インデックスファンドで増やした資産を、どう使っていくか

― 取り崩しの考え方と、心構えまで ―

インデックスファンドを活用した長期投資は、時間を味方につけて資産を増やす有効な方法として広く知られています。しかし、「増やす」ことに比べて、「使う」こと、つまり資産の取り崩しについては、意外と語られる機会が多くありません。
投資を続けて資産額が大きくなってきたとき、あるいは引退後に生活費として使う段階になったとき、どのように現金化していけばよいのでしょうか。

インデックスファンドは、保有しているだけでは現金収入を生みません。資産額は増えていても、売却しない限り生活費には使えないという特徴があります。そのため、将来お金を使う段階では、計画的に取り崩していく必要があります。
この「取り崩し方」については、長年にわたり多くの研究が行われており、比較的安全性が高いとされる代表的な方法がいくつか知られています。

代表的な2つの取り崩し戦略

インデックスファンドの取り崩し方法として、特に有名なのが「年4%」を目安にした考え方です。ただし、この4%には2つの異なる使い方があるため、混同しないことが重要です。

① 引退時の資産額を基準に、定額で取り崩す方法

① 引退時の資産額を基準に、定額で取り崩す方法

1つ目は、引退時点の資産総額を基準に、その4%にあたる金額を毎年一定額で取り崩していく方法です。
たとえば、引退時に3000万円の資産がある場合、1年目の取り崩し額はその4%である120万円になります。この120万円を、2年目以降も同じ金額で取り崩し続けるという考え方です。

一見すると、「毎年4%ずつ使えば、25年で資産が尽きてしまうのではないか」と感じるかもしれません。しかし、ここで重要なのは、資産を運用しながら取り崩すという点です。

過去の長期データを用いた研究では、株式と債券を組み合わせた分散投資を行い、年4%を定額で取り崩した場合、30年以上経過しても資産が残る可能性が非常に高いことが示されています。
しかも、多くのケースでは、資産が減るどころか、時間の経過とともに増えていく結果も確認されています。

これは、取り崩し後に残った資産が再び成長するためです。
たとえば、1年目に120万円を使っても、残りの資産が運用によって増えれば、翌年も同じように取り崩しながら資産全体は維持、あるいは成長していきます。
「お金に働いてもらう」とは、まさにこの状態を指します。

② 毎年の資産残高を基準に、定率で取り崩す方法

② 毎年の資産残高を基準に、定率で取り崩す方法

2つ目は、毎年の資産残高の4%を、その年ごとに取り崩す方法です。この方法では、資産が増えた年は取り崩し額も増え、減った年は取り崩し額も自然に減ります。

この考え方の背景には、長期的な平均リターンと物価上昇の影響があります。
株式と債券を組み合わせたポートフォリオは、長期的には一定の成長が期待できる一方で、物価の上昇によってお金の価値は少しずつ目減りします。
そのため、実質的な成長分を差し引いた結果、「年4%程度であれば、無理なく取り崩せる」という目安が導かれています。

この方法のメリットは、市場環境に応じて支出額が自動的に調整される点です。相場が好調なときは余裕をもって使い、厳しい年は支出を抑えることで、資産を長持ちさせることができます。

資産配分と為替の考え方

これらの取り崩し戦略は、株式と債券を組み合わせた分散投資を前提としています。重要なのは、個別の銘柄に偏るのではなく、広く分散された商品を用いることです。
一部の国や企業に集中した投資では、想定通りの結果が得られない可能性が高まります。

また、海外資産を含める場合は為替の影響も受けます。ただし、生活費の一部が公的な年金など安定した収入で賄われる場合、異なる通貨建ての資産を持つことは、全体としてのリスク分散につながる面もあります。

理論と現実のギャップ

理論と現実のギャップ

理論上は、年4%を目安に取り崩せば、資産は長期間にわたって持続する可能性が高いとされています。しかし、実際にこの方法で生活している人は、意外と多くありません。

その理由の一つは「感情」です。
人は将来の不確実性を前にすると、「もう少し残しておいた方が安心ではないか」「長生きしたら足りなくなるかもしれない」と考え、なかなか資産を減らす決断ができません。
結果として、引退後も資産を使い切れず、むしろ増え続ける人も少なくないのです。

お金は、貯める・増やす・使う・のバランスが大切

長年貯めてきたお金は、使うことに対して心理的な抵抗が生まれがちです。「使うのがもったいない」と感じる気持ちは自然ですが、貯めること自体が目的になってしまうと、本来得られるはずの豊かさを逃してしまいます。

もちろん、無計画に使いすぎるのは問題ですが、使うべきときに使えないのも同じくらい大きな損失です。
家計管理とは、単に節約を続けることではなく、「安心して使ってよい範囲」を理解し、その中で人生を楽しむことでもあります。

インデックス投資は、資産を増やす力に非常に優れています。だからこそ、将来どのように使うかまで含めて考えることが大切です。
貯める力、増やす力、そして使う力。この3つのバランスを意識することが、長い人生を通してお金と上手に付き合うための鍵と言えるでしょう。