11月のお金のニュース総まとめ
――「年収の壁」からフリーランス保護、医療制度、詐欺対策、新ファンドまで
11月は、家計や働き方、資産形成に直結する重要なニュースが相次いだ。税制改正の行方、社会保険制度の見直し、医療費負担の増加懸念、消費者トラブル、クレジットカード不正利用問題、そして新たな投資商品の登場まで、多方面で制度と環境が変化しつつある。本記事では、それぞれの論点を整理し、家計防衛と資産形成の観点から丁寧に解説する。
①「年収103万円の壁」は変わるのか

衆議院選挙で与党が過半数を割り込み、政策実現に野党の協力が不可欠となった。その中で注目されているのが、国民民主党が掲げる「103万円の壁」解消である。
103万円とは、基礎控除48万円と給与所得控除55万円の合計額であり、この範囲内であれば所得税がかからない仕組みだ。背景には日本国憲法第25条の生存権があり、「健康で文化的な最低限度の生活」を守るため、一定所得までは課税しないという考え方がある。
しかしこの水準は1995年以降ほぼ据え置きで、物価上昇や賃金水準の変化を考えると見直しは自然な流れともいえる。仮に壁が178万円まで拡大されれば、年収200万円で約8.6万円、500万円で約13.2万円、1000万円で約22.8万円の手取り増が試算されている。一方で「高所得者優遇」との批判や、社会保険料の「130万円の壁」との整合性、7~8兆円規模の税収減という財源問題もある。
重要なのは、仮に手取りが増えたとしても、その増加分を浪費せず貯蓄や運用に回すことだ。制度変更はチャンスにもリスクにもなる。
②フリーランス保護新法が施行
11月からフリーランスを保護する新法が施行された。2020年時点で約462万人いるとされるフリーランスは、発注事業者との力関係の差から、報酬減額や突然の契約解除など不利益を受けやすかった。
新法では発注側に以下の7つの義務が課される。
- 取引条件の書面明示
- 60日以内の報酬支払い
- 不当減額などの禁止
- 募集情報の適正表示
- 育児・介護への配慮
- ハラスメント対策
- 契約解除時の30日前予告
ただし義務の適用範囲は事業者規模や契約期間で異なる。違反には罰則もある。問題は認知度が低いことで、フリーランスの7割以上、発注側の5割以上が内容を知らないという調査結果もある。
法律は知らなければ守れないし、使えない。自分の権利と義務を理解することが損失回避の第一歩だ。
③「106万円の壁」撤廃へ
所得税の壁とは別に、社会保険料が発生する「106万円の壁」も大きな議論となっている。現在、従業員51人以上の企業で週20時間以上働き、月額賃金88,000円以上などの条件を満たすと社会保険加入が義務付けられる。
壁を超えると手取りが約15万円減るため、労働時間を調整する人が多い。今回の撤廃議論は、最低賃金上昇により賃金要件が実質的に意味を失ってきたことが理由とされるが、厚生年金加入者を増やし制度維持を図る意図も否めない。
将来の年金増額で元を取るには長期間が必要との試算もある。制度改正が続く中、壁を気にして抑制するより、稼ぐ力と資産形成力を高めるほうが合理的との考え方も示された。
④高額療養費制度の見直し

政府は高額療養費制度の自己負担上限引き上げを検討中だ。現在、日本の公的医療保険は自己負担3割が原則であり、さらに高額療養費制度により月額上限が設定されている。年収370~770万円層で約8万円が目安だ。
しかし少子高齢化と医療費増大により制度維持は困難になりつつある。引き上げ幅は未定だが、家計にとって影響は大きい。
重要なのは感情ではなく数字で影響を把握すること。仮に生涯で10万円負担増なら、副業や投資で10万円確保すればよい。安易に民間保険へ飛びつくのではなく、冷静に対応する姿勢が求められる。
⑤ウォーターサーバー勧誘トラブル
国民生活センターによると、ウォーターサーバー契約トラブルが過去最多となった。ショッピングモールなどで「無料」「いつでも解約可」と説明されながら、実際は高額違約金が発生するケースがある。
教訓は三つ。
・うまい話は向こうから来ない
・対面販売で即決しない
・持ち帰って複数人に相談する
「無料」「今だけ」「キャッシュバック」といった言葉には警戒が必要だ。
⑥イオンカード不正利用問題
イオンカードで不正利用が急増し、利用停止後も少額決済が継続するケースが報告された。通常は連絡後補償されるが、対応遅延や返金まで半年かかる事例もある。
不正入手ルートは主に二つ。
- フィッシング詐欺
- カード番号総当たり攻撃
対策は以下の通り。
・不要なカードは解約
・メールのリンクを開かない
・公式サイトは検索経由でアクセス
・Gmailなどでフィルタ活用
・家計簿アプリで毎月確認
守る力がなければ、いくら稼いでも失われる。
⑦高配当株ファンド「SBI版SCHD」登場

SBIアセットマネジメントが「S・米国高配当株式100」を設定した。これは米国ETF「SCHD」を参考にした高配当・増配株投資商品であり、先行する楽天版に続く形だ。
高配当投資はインカム重視の戦略として人気だが、分配型商品のコストや税制面を理解したうえで選ぶ必要がある。ブームだから飛びつくのではなく、長期目線で比較検討することが大切だ。
まとめ
11月のニュースは一貫して「制度は変わる」「守りが重要」「稼ぐ力を高めよ」というメッセージを含んでいる。
・年収の壁は見直し議論
・社会保険負担は拡大方向
・医療制度も引き締め
・詐欺やトラブルは増加
・投資商品は多様化
時代は追い風ではない。しかし、制度を理解し、守る力を高め、資産を積み上げることで逆風は乗り越えられる。
感情ではなく数字で考え、行動で対応する。
収入を増やし、支出を抑え、資産を育てる。
それこそが変化の時代を生き抜く最も確実な方法である。