3年で2倍に高騰中のゴールドが、新興国で更に買われている理由

世界の変化とともに高まる「金」への関心

世界の変化とともに高まる「金」への関心

近年、金(ゴールド)への注目が世界的に高まっています。とりわけ目立つのが、新興国の中央銀行による金の積み増しです。中国は七か月連続で金を買い越し、ポーランドでは外貨準備の約二割を金が占めるまでになりました。こうした動きの背景には、ドルへの依存を見直す流れや、先行きへの不透明感が色濃く反映されているように見えます。

中央銀行による金の売買動向を長期で見ると、2010年以降は明らかに「買い」が優勢となっています。特に2024年を基準にすると、直近三年間の購入量は過去と比べても非常に多く、世界の金融当局が金を重視している姿勢がうかがえます。この流れは、私たち個人の資産形成にとっても、無視できない示唆を与えてくれます。

金の需要が高まるときとは

金は、いつも人気を集めているわけではありません。世界が安定し、景気が良い局面では、金はむしろ敬遠されがちです。利息を生まない金よりも、預金や債券、株式といった「収益を生む資産」に魅力を感じる人が増えるからです。

しかし、世界が不安定になると状況は変わります。景気の後退、急激な物価上昇、通貨の価値に対する不安が広がると、人々は「最後に頼れるもの」を探し始めます。その候補として、長い歴史の中で価値を保ってきた金が選ばれてきました。金の需要は、世界の不安の度合いを映す鏡のような存在とも言えるでしょう。

不安定さを増す世界情勢

現在の世界を見渡すと、残念ながら不安材料は少なくありません。貿易を巡る緊張は再び高まり、ロシアとウクライナの戦争は終結の見通しが立っていません。中国による台湾侵攻リスクや、中東情勢の悪化も続いています。こうした複数の不安が同時に存在する状況は、世界全体の緊張感を高めています。

このような環境の中で、金の価格は2022年後半からおおよそ二倍に上昇しました。価格の動きだけを見ても、金に対する需要の強さが感じられます。ただし、価格が上がっているからといって、慌てて買う必要があるわけではありません。

金は「増やす」より「守る」ための資産

金は「増やす」より「守る」ための資産

金は「アセット」、すなわち資産の一つですが、その役割は株式などとは少し異なります。金は資産を大きく増やすための存在というよりも、資産を守るための存在です。そのため、しばしば「守りのアセット」と呼ばれます。

誤解されやすい点ですが、「守り」といっても価格が安定しているわけではありません。金の価格は、時に株式並みに大きく変動します。金が本当に力を発揮するのは、価格の上下ではなく、世界の秩序そのものが揺らぐような局面です。

極端な例を挙げれば、国家が債務を返済できなくなり、国債の価値が失われる。あるいは資本主義の枠組みが大きく揺らぎ、株式市場が機能しなくなる。さらには大規模な戦争によってハイパーインフレが起こり、通貨の購買力が大きく低下する。そのような事態において、金が価値を保つ手段となる可能性があります。

「無知に対する保険」という考え方

金はかつて、「無知に対する保険」と呼ばれたことがあります。私たちは、世界で起きているすべての変化を把握することはできません。ロシア・ウクライナの開戦や中東情勢の急変も、多くの人にとっては突然の出来事に感じられたはずです。

しかし実際には、そうした出来事は長い時間をかけて積み重なった変化の結果です。そのすべてを予測することは困難だからこそ、自分の認識の限界を補う手段として、変化に強い資産を持つという考え方が生まれます。その一つの選択肢が金なのです。

ポートフォリオの中での位置づけ

私見ではありますが、金の保有比率はポートフォリオ全体の5%程度が一つの目安になると考えています。過度に期待しすぎず、かといって完全に持たないわけでもない。その中間的な位置づけが、金にはふさわしいように思われます。

金への投資手段としては、現物だけでなく、金価格に連動するETFも選択肢となります。コストの低い商品を選ぶことが重要であり、安易に複雑なバランスファンドを選ぶ際には注意が必要です。

おわりに

おわりに

金の需要が高まっている背景には、世界の不安定化という明確な理由があります。この流れは、しばらく続く可能性が高そうです。プラチナなど他の貴金属にも注目が集まる一方、人工技術の進歩により価値の前提が変わりつつある宝石類は、資産防衛の観点では慎重な判断が求められます。

変化の激しい時代だからこそ、長い歴史の中で静かに価値を保ってきた金の役割を、あらためて見つめ直してみてはいかがでしょうか。資産を「増やす」だけでなく、「守る」という視点が、これからの時代にはより重要になっていくのかもしれません。