外国人オーナーの賃貸物件は要注意。税金の落とし穴と対策方法

増え続ける「海外在住の貸主」と賃貸契約の現実

増え続ける「海外在住の貸主」と賃貸契約の現実

近年、日本の不動産市場では、海外に住む人が所有する物件が増えています。都市部を中心に、住宅やマンションを投資目的で購入する動きが広がり、日本国内に住む人が、意識しないまま海外在住の貸主と賃貸契約を結ぶケースも珍しくなくなりました。日本の不動産は、品質や管理水準が高い一方で、国際的に見ると価格が比較的抑えられていると評価されることが多く、投資先として魅力的に映っているようです。

こうした背景から、賃貸市場には新たな形のリスクが生まれています。それが「貸主が日本に住んでいない場合に生じる税務上の問題」です。家賃を支払っているだけの借主が、後になって税務上の責任を問われる可能性があるという点は、多くの人にとって想定外の出来事でしょう。

トラブルの概要

ある事例では、5年にわたり家賃を支払い続け、賃貸契約を終了しようとしたところ、突然税務上の指摘を受け、多額の税金を納めるよう求められたというケースがありました。借主にとっては「家賃はすべて支払ってきた」「税金は貸主が払うものではないのか」という疑問が当然浮かびます。

しかし、税務の世界では「誰が最終的に負担すべきか」と「誰に納付義務があるか」は必ずしも一致しません。ここに、この問題の難しさがあります。法律上、一定の条件下では、借主が税金を預かって国に納める役割を担うことが定められているのです。

日本における家賃収入と課税の基本的な考え方

まず基本的な仕組みとして、日本国内に住む貸主が家賃収入を得た場合、その収入に対して税金が課されます。家賃として受け取った金額がそのまま自由に使えるわけではなく、一定割合を税金として申告・納付しなければなりません。

この点は、多くの人が理解している一般的なルールです。ところが、貸主が日本に住んでいない場合、この「申告して納税する」という流れが円滑に進まない可能性が出てきます。国としては、海外にいる人に対して確実に税金を回収することが難しいという事情を抱えているのです。

非居住者が貸主の場合に採用される「源泉徴収」の仕組み

そこで用いられているのが「源泉徴収」という仕組みです。源泉徴収とは、本来は収入を得た人が支払う税金を、支払う側があらかじめ差し引いて国に納める制度です。会社が従業員の給与から税金を天引きする仕組みを思い浮かべると、理解しやすいでしょう。

不動産の賃貸においても、貸主が日本に住んでいない場合、国は「税金を確実に回収するために、家賃を支払う側に徴収の役割を担わせる」というルールを設けています。つまり、借主が家賃を支払う際に、一定割合の税金を差し引き、それを国に納付する義務が生じるのです。

見落とされがちなルール

見落とされがちなルール

法律では、日本国内にある不動産を、日本に住んでいない貸主から借りる場合、支払う家賃の一部を源泉徴収しなければならないと定められています。仮に家賃が月額で支払われる場合、その都度、定められた割合の税金を差し引き、残りの金額を貸主に送金する形となります。

この手続きを行わず、家賃の全額をそのまま支払ってしまうと、源泉徴収義務を果たしていないと判断されます。その結果、本来差し引くべきだった税金が未納扱いとなり、数年分がまとめて請求されることもあるのです。

「知らなかった」では済まされない借主の責任

このようなケースで多くの人が抱く疑問が、「本来払うべきなのは貸主なのではないか」という点です。確かに、税金の実質的な負担者は貸主です。しかし、法律上の手続きとして源泉徴収を行う義務を負っているのは借主側です。

そのため、税務上は「源泉徴収義務に違反した」という事実が重視され、まずは借主に対して納付を求めることになります。その後、借主が貸主に対して立て替えた分を請求すること自体は可能ですが、国がその回収を手助けしてくれるわけではありません。この点に、制度の厳しさがあります。

過度に恐れる必要はないが注意は必要

もっとも、この問題はすべての賃貸契約に当てはまるわけではありません。重要なのは「貸主が日本に住んでいないかどうか」であり、国籍そのものではありません。日本に住んでいる貸主であれば、たとえ外国出身であっても、この源泉徴収の問題は原則として生じません。

また、個人が自ら居住する目的で借りる場合には、源泉徴収が不要な一方で、法人が事務所や社宅として借りる場合や、個人が事業目的で物件を利用する場合には、源泉聴取が必要になるため、注意が必要です。

トラブルを避けるためにできる現実的な対策

トラブルを避けるためにできる現実的な対策

このようなリスクを避けるためには、契約段階での確認が極めて重要です。貸主が日本に住んでいるかどうかを把握すること、契約内容に不明点があれば専門家や仲介業者を通じて確認することが有効です。また、国内の事業者を間に入れて賃料を支払う仕組みを選ぶことで、リスクを軽減できる場合もあります。

特に、法人契約や事業用物件の場合には、「相手が非居住者である可能性」を常に意識しておくことが、将来的な損失を防ぐことにつながります。

まとめ:知識がトラブルを防ぐ最大の武器になる

今回取り上げたのは、非居住者から物件を借りたことで、借主が思わぬ税務上の責任を負うことになった事例です。ポイントは、問題の本質が「外国人かどうか」ではなく、「日本に住んでいるかどうか」、そして「契約の目的が何か」にあるという点です。

現時点では関係する人が限られているように感じるかもしれませんが、今後このような契約形態はさらに増えていくと考えられます。金額的な影響も大きいため、事前に正しい知識を持っておくことが、何よりの予防策となるでしょう。日常では見えにくい税務のルールこそ、早めに理解しておくことが大切です。