大企業と小規模事業者の「役割の違い」について解説

大企業の役割とは何か――それは「マーケットを生む」こと

大企業の役割とは何か――それは「マーケットを生む」こと

まず、大企業の役割を正しく理解しましょう。
結論から言えば、大企業の役割は「マーケットを生み出すこと」にあります。

彼らは莫大な資金を投じ、徹底的なリサーチを行い、新商品や新サービスを開発し、大規模な広告・宣伝によって世の中に問いかけます。
「こんなものがあったら便利ではないか」
「あなたは、本当はこれを欲していたのではないか」と。

その代表例として、QRコード決済の普及が挙げられます。
数年前まで、スマートフォンで支払いをするという行為は、限られた人のものでした。しかし、ある企業が100億円規模のキャッシュバックキャンペーンを展開したことで、状況は一変します。
人々は一斉にアプリをダウンロードし、店舗は対応を迫られ、社会全体に新しい「当たり前」が生まれました。

これはまさに、マーケットが創出された瞬間です。

しかし忘れてはならないのは、ここに至るまでに投じられた膨大な経営資源です。
資金、人材、情報、時間――それらすべてを動員しても、なお失敗するのが新市場の創造です。
起業を志す個人が、同じ戦い方をしようとする必要はありませんし、するべきでもありません。

小規模事業者の本当の役割――それは「イライラを消す」こと

小規模事業者の本当の役割――それは「イライラを消す」こと

では、中小零細事業者やフリーランス、これから起業しようとする個人の役割は何でしょうか。

それは、大企業が生み出したマーケットの中に必ず生まれる「小さなイライラ」を解消することです。

新しい商品やサービスが世に出るとき、そこには必ず戸惑いが生まれます。
使い方がわからない。
選択肢が多すぎて決められない。
自分の場合、何が最適なのかわからない。

QRコード決済も同様でした。
アプリのダウンロード方法がわからない人。
操作に不安を覚える高齢者。
複数の決済サービスの違いが理解できず、結局疲れ果てて使わなくなる人。

こうした「声にならない不満」「小さなつまずき」こそ、小規模事業者が向き合うべき場所です。

大企業もサポート体制を整えますが、万人を満足させることはできません。

行き届かないことも出てきます。
一万人の利用者がいれば、一万通りの理解度と不安が存在します。
その細やかな隙間に手を差し伸べられるのが、小規模事業者の強みなのです。

稼ぐとは、困っている人の隣に立つこと

稼ぐとは、困っている人の隣に立つこと

ビジネスとは、決して難解なものではありません。
本質はとてもシンプルで明快です。

「困っている人のイライラを見つけ、それを解消すること」

商品Aを使って困っている人がいるなら、より適した商品Bを提案する。
サービスCの使い方に悩んでいる人が多いなら、丁寧に教える場を作る。
既存サービスDに不満を抱える人に、自分なりの解決策を体験してもらう。

それは派手な革新ではないかもしれません。小さなことかもしれません。
しかし、確実に感謝され、対価を得られる仕事です。

小規模事業者に求められるのは、世界を変える発明ではありません。
目の前の誰かの眉間に刻まれた「小さなしわ」に気づくことです。

結びに――あなたは、どこに立つのか

起業を考えるとき、自分をライオンに見立てる必要はありません。
ハムスターには、ハムスターなりの戦い方があります。

大企業が莫大な資金を投じて切り拓いた広い草原の中で、足元に落ちているほんの小さな石につまずく人がいる。
その石をそっと取り除くこと。
それが、小規模事業者の価値であり、存在意義です。

大きな夢を描くことはとても素晴らしいことです。
しかし同時に、自分が立つべき場所を正しく知ることも、同じくらい大切です。

マーケットの中に生まれる大小さまざまな「イライラ」に、静かに耳を澄ませてみてください。
そこには、あなたにしかできない仕事の種が、きっと眠っています。